島崎藤村 『夜明け前』 「御嶽行きとは、それでも御苦労さまだ。山は…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「御嶽行きの予定は大変だな。山はまだ雪で登れないだろ?」
「うん、三合目まで行っても無理だ。王滝まで行って、そこで2、3日滞在するよ。」
「馬籠のおやじはまだ元気かい?心配だろうな。そういえば、半蔵さん、江戸はどうだった?」
「こんなことになると思って、心配してたんだ。」
「そうだろ。イギリスの軍艦が来て江戸が大騒ぎらしいよな。返答は来月の8日が期限だって。結局、金を払わされることになるんだろう。攘夷なんて煽るからこんなことになるんだ。攘夷党だって国を思ってるんだろうけど、俺にはあの連中の考えがわからん。外交と国内政治を混同してもいいわけ?」
「そうだね。」
「半蔵さん、俺が庄屋の息子じゃなかったら、今頃京都に行って『攘夷だ!鎖国だ!』とか言ってたかもな。街道がどうなっても、みんなが困っても関係ないってくらいなら、そもそも心配することなかったんだよ。」

原文 (会話文抽出)

「御嶽行きとは、それでも御苦労さまだ。山はまだ雪で、登れますまいに。」
「えゝ、三合目までもむずかしい。王滝まで行って、あそこの里で二、三日参籠して来ますよ。」
「馬籠のお父さんはまだそんなですかい。君も心配ですね。そう言えば、半蔵さん、江戸の方の様子は君もお聞きでしたろう。」
「こんなことになるんじゃないかと思って、わたしは心配していました。」
「それさ。イギリスの軍艦が来て江戸は大騒ぎだそうですね。来月の八日とかが返答の期限だと言うじゃありませんか。これは結局、償金を払わせられることになりましょうね。むやみと攘夷なんてことを煽り立てるものがあるから、こんな目にあう。そりゃ攘夷党だって、国を憂えるところから動いているには相違ないでしょうが、しかしわたしにはあのお仲間の気が知れない。いったい、外交の問題と国内の政事をこんなに混同してしまってもいいものでしょうかね。」
「さあねえ。」
「半蔵さん、これでわたしが庄屋の家に生まれなかったら、今ごろは京都の方へでも飛んで行って、鎖港攘夷だなんて押し歩いているかもしれませんよ。街道がどうなろうと、みんながどう難儀をしようと、そんなことにおかまいなしでいられるくらいなら、もともと何も心配することはなかったんです。」


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