島崎藤村 『夜明け前』 「お民、お前はもっとからだをだいじにしなく…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「お民、お前はもっと体を大切にしないとダメだな」
「妻籠でもそんなこと言われましたっけ」
「そういえば、妻籠ではどんな話が出た?」
「馬籠のお父さんと半蔵さんは、いい親子だって」
「そうかねぇ」
「私と兄さんも、親とは早くに別れましたもんね」
「それで? 神葬祭の話は出なかったのかい?」
「私は何も聞きません。兄さんがこんなこと言ってましたよ――半蔵さんも夢が多い人だって」
「ふーん、自分は夢が少なすぎると思ってるんだけど――夢のない人生ほど味気ないものはないと思ってね」
「ねえ、あなたが中津川の香蔵さんと話すのをそばで聞いてると、私の兄さんと話す時とは違いますねえ」
「そりゃ、お前、香蔵さんと俺は同じだから。寿平次さんの方は、俺の心にいろいろ見えてるみたいなんだよ。俺は、お前の兄さんの顔を見ると、何か言いたくなるよ」
「あなたは兄さんが嫌いですか」
「どうしてそんなこと言うんだい? 寿平次さんと俺は、同じように古い青山の家に生まれた人間なんだよ。立場は違うかもしれないけど、やっぱり兄弟は兄弟だろ」

原文 (会話文抽出)

「お民、お前はもっとからだをだいじにしなくてもいいのかい。」
「妻籠でもそんなことを言われて来ましたっけ。」
「そう言えば、妻籠ではどんな話が出たね。」
「馬籠のお父さんと半蔵さんとは、よい親子ですって。」
「そうかなあ。」
「兄さんも、わたしも、親には早く別れましたからね。」
「何かい。神葬祭の話は出なかったかい。」
「わたしは何も聞きません。兄さんがこんなことは言っていましたよ――半蔵さんも夢の多い人ですって。」
「へえ、おれは自分じゃ、夢がすくなさ過ぎると思うんだが――夢のない人の生涯ほど味気ないものはない、とおれは思うんだが。」
「ねえ、あなたが中津川の香蔵さんと話すのをそばで聞いていますと、吾家の兄さんと話すのとは違いますねえ。」
「そりゃ、お前、香蔵さんとおれとは同じだもの。そこへ行くと寿平次さんの方は、おれの内部にいろいろなものを見つけてくれる。おれはお前の兄さんの顔を見ていると、何か言って見たくなるよ。」
「あなたは兄さんがきらいですか。」
「どうしてお前はそんなことを言うんだい。寿平次さんとおれとは、同じように古い青山の家に生まれて来た人間さ。立場は違うかもしれないが、やっぱり兄弟は兄弟だよ。」


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