GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『千曲川のスケッチ』
現代語化
「もうそろそろ家に入れてもいいんじゃない」
「いやいや、聞いてくれよ。ばあちゃんは子供が7人いたけど、みんな死んじゃって……今の辰は養子なんだよ……そしたらさ、ばあちゃんが俺の留守に、家のものを全部持って行っちゃった。男と女だから、たいていのことは許せるんだが……盗みだけはダメだ。今ここでばあちゃんを入れちゃうと、あの隠居も信心ぶって、ばあちゃんが貯めたものを欲しがってるって噂が立つ。それが嫌なんだよ。ばあちゃんが来ても、すぐに盗みの話になって揉めるに決まってるだろ。モメても仕方ないよ。ほら、あの人さ――よく見てみると、泥棒だってわかるだろ。恐ろしいよな」
「へえ、あれが娘さんですか」
「子供もいるんだよ。可哀想だから置いてあげようと思うんだ。世間じゃ妙に噂してるみたいだけど……俺だってもう67歳なんだ……こんな歳で、あんな女を入れたなんて言われたら、情けないだろ――それが悔しいんだよ」
「いくつになっても気持ちは一緒よ」
原文 (会話文抽出)
「婆さんに別れてからねえ、今年で二十五年に成りますよ」
「もう好加減に家へ入れるが可いや」
「まあ聞いて下さい。婆さんには子供が七人も有りましたが、皆な死んで了った……今の辰は貰い子でサ……どうでしょう、婆さんが私の留守に、家の物を皆な運んで了う。そりゃ男と女の間ですから、大抵のことは納まりますサ……納まりますが……盗みばかりは駄目です。今ここで婆さんを入れる、あの隠居も神信心だなんて言いながら、婆さんの溜めたのを欲しいからと人が言う。それが厭でサ。婆さんが来ても、直に盗みの話に成ると納まらないや。モメて仕様が無い。ホラ、あの話ねえ――段々卜ってみると、盗人が出て来ましたぜ。可恐しいもんだねえ」
「へえ、あれが娘ですか」
「子も有るんでさあね。可哀そうだから置いて遣ろうと言うんですよ。妙に世間では取る……私だって今年六十七です……この年になって、あんな女を入れたなんて言われちゃ、つまらない――そこが口惜しいサ」
「幾歳に成ったって気は同じよ」