島崎藤村 『千曲川のスケッチ』 「三月四月は食いじまい」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『千曲川のスケッチ』

現代語化

「3月4月は金欠の時期」
「でも、俺が子供の頃は地主さんが来てくれたら、必ず一升(のお酒)買って、漬物だけで一杯やるのが決まりだった。今年は息子に任せてるけど、あいつは何すんだろ……昔はそうだった」
「地主さんにさー、来てくださいって、早く行って来てくれよ」
「お、日が差してきたな。さっきまで雪降ってたけど、こりゃいい天気だ」
「俺も一人だし、普段は誰も遊びに来ねえんだよ。年寄りだからなあ……それで一緒に住んでくれって頼まれたから引き受けたけど、息子が気に入らねえみたいでさ、黙ってアレを入れたって」
「飯とかは作ってくれるんですか」
「そこなんだよ。世間の人はそう思うんだ。でも俺、作らせてねえ。作らせたら全部食われちまうから……そこは俺も賢いんだよ。でも、世間の人はそう思わない。そこが辛いんだよね」

原文 (会話文抽出)

「三月四月は食いじまい」
「しかし私の時には定屋様(地主)がお出なさると、必と一升買って、何がなくとも香の物で一杯上げるという風でした。今年は悴に任しときましたから、彼奴はまたどんな風にするか……私の時には昔からそうでした」
「定屋さんになア、来て御くんなんしょって、早く行って来てくれや」
「ああ、日が射して来た、先刻までは雪模様でしたが、こりゃ好い塩梅だ」
「私も唯一人ですし、平常は誰も訪ねて来るものが無いんです。年寄ですからねえ……ですから置いてくれというので、ああいうものを引受けて同居さしたところが忰が不服で黙ってあんなものを入れたって言いますのさ」
「飯なぞは炊いてくれるんですか」
「それですよ、世間の人はそう思う。ところが私は炊いて貰わない。どうしてそんな事をしようものなら皆な食われて了う……そこは私もなかなか狡いや。だけれども世間の人はそう言わない。そこがねえ辛いと言うもんです」


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