三遊亭圓朝 『名人長二』 「親方大変です、何うしたもんでしょう」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『名人長二』

現代語化

「親方、大変です。どうしたらいいでしょうか?」
「え? どうしたんだ? 大げさに言うな。落ち着け」
「だって親方、私が留守の間に兄貴がいなくなっちゃったんです」
「ほら、そうだろう。あんなことを言うから身に覚えがあるんだ。中の釘をまっすぐに打っても、上の釘一本を斜めに打ったら留め具が外れる可能性があるって言うだろう…杉の堅い木じゃ」
「それは確かに堅気です。遊びはしませんから」
「大きいものか?」
「私より少し大きいです。確か今年29です」
「何を言ってるのかさっぱり分からない。道具のこと聞いてるんだ」
「ああ、道具ですか。道具は家具布団まで全部私にくれました」
「まだ分からない…棚か箱か?」
「いえ、店は貸し店舗になってました」
「なんだって? 菓子棚か。うん、菓子箪笥のことかい? それがどうしたってことだ?」
「どうしたのかわけが分からないから聞きに来たんですが、親方と相談もなしにって…」
「そりゃあ長二がすることだから、いちいち私に相談しないよ」
「でも、それで済まないですよ。私はそんな人だとは思わなかった…情けない人だなあ」
「お前、何かその仕事のことで長二と喧嘩でもしたのか?」
「いいえ、長い間助手をしていますが、喧嘩どころか大きな声で呼んだこともありません…私を可愛がってくれて、近所の人が実の兄弟でもあんなふうにはできないと感心しているくらいなのに、私が六間堀に行ってる間に黙って出て行ったんだから、不思議でなりません」
「不思議なことなんてない。お前の技が鈍いから出て行ったんだ。長二はお前に何も言わなかったのか?」
「何も言ってません」
「へんなな。あれほど親切な長二が何も教えないなんて、何か理由があるはずだ」
「少し心当たりがあるので、明日にも私が尋ねてみます」
「それはそうだ。何か深いわけがあるのだろう。心当たりがあるんなら、わざわざ年寄りの親方が行く必要はない。私が尋ねよう」
「あなたは分かりません。私が聞いてみますから、あなたは今夜帰ったら長二に『明日仕事の合間にちょっと来てくれ』って伝えてください」
「何を言ってるんだ。家にいない兄貴に来いって言ったら」
「どこにに行ったんですか?」
「どこかに身を隠したから心配してるんだ」
「なんだって? 長二が身を隠しただと? ええ? じゃあなんで早くそう言わないんだ?」
「さっきから言ってるじゃないです」
「さっきからの話は釘の話じゃないか」
「だから変だなと思ったんです…困るな、耳が遠い…えーと、あの…遠方に急に旅立つって大家さんのところに言ってから、どこにも連絡せずにいなくなってしまったんです」
「急に旅立ったのか。それでも自分に何か言ってくるはずだ。黙って行くってことは、何かやましいことがあるんだろうが、長二に限ってそんなことはないはずだが」

原文 (会話文抽出)

「親方大変です、何うしたもんでしょう」
「えゝ、何だ、仰山な、静かにしろえ」
「だッて親方私の居ねい留守に脱出しちまッたんです」
「それ見ろ、彼様にいうのに打様を覚えねえからだ、中の釘は真直に打っても、上の釘一本をありに打ちせえすりゃア留の離れる気遣えは無いというのだ……杉の堅木か」
「まア堅気だ、道楽をしねえから」
「大きいもんか」
「私より少し大きい、たしか今年廿九だから」
「何を云うのかさっぱり分らねえ、己ア道具の事を聞くのだ」
「ムヽ道具ですか道具は悉皆家具蒲団まで私にくれて行ったんです」
「まだ分らねえ……棚か箱か」
「へい、店は貸店になっちまッたんです」
「何だと菓子棚だ、ウム菓子箪笥のことか、それが何うしたんだと」
「何うしたんか訳が分らねえから聞きに来たんだが、親方へ談なしだとねえ」
「そりゃア長二が為る事だものを、一々己に相談する事アねえ」
「だッて、それじゃア済まねえ、己ア其様な人とア思わなかった……情ねえ人だなア」
「手前何か其の仕事の事で長二と喧嘩でもしたのか」
「いゝえ、長え間助に行ってるが、喧嘩どころか大きい声をして呼んだ事もねえ……己を可愛がって、近所の人が本当の兄弟でも彼アは出来ねえと感心しているくれえだのに、己が六間堀へ行ってる留守に黙って脱出したんだから、不思議でならねえ」
「何も不思議アねえ、手前の技が鈍いから脱出したんだ、長二は手前に何も云わねいのか」
「何とも云いませんので」
「はてな、彼様に親切な長二が教えねえ事アねえ筈だが……何か仔細のある事だ」
「些し心当りがあるから明日でも己が尋ねてみよう」
「左様です、何か深いわけがあるんです、心当りがあるんなら何も年寄の親方が行くにゃア及びません、私が尋ねましょう」
「手前じゃア分らねえ、己が聞いてみるから手前今夜帰ったら、長二に明日仕事の隙を見て一寸来てくれろと云ってくんな」
「親方何を云うんです、家に居もしねえ長兄に来てくれろとア」
「何処へ行ったんだ」
「何処かへ身を隠したから心配しているんだ」
「何だと、長二が身を隠したと、えゝ、そんなら何故速くそう云わねえんだ」
「先刻から云ってるんです」
「先刻からの話ア釘の話じゃアねえか」
「道理で訝しいと思った……困るな、つんぼ………エヽナニあの遠方へ急に旅立をすると、家主の所え云置いて、何処へも沙汰なしに居なくなっちまッたんです」
「急に旅立をしたと、それにしても己の所え何とか云いそうなもんだ、黙って行く所をもって見りゃア、何か済まねえ事でもしたんだろうが、彼奴に限っちゃア其様な事アあるめいに」


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