三遊亭圓朝 『名人長二』 「御高名は予て承知していましたが、つい掛違…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『名人長二』

現代語化

「お名前は前から知ってますけど、勘違いしちゃって」
「私もお名前は知ってますが、用がないんでお会いしませんでした。何か御用ですか?」
「はい、お願いしたいことがあります。あと、さっきの失礼を謝ります…三吉…出てきて謝れ」
「親方さん、さっき口上を間違えて失礼しました。すみません」
「へい、どうしたの? 謝ることはないよ…あ、旦那…さっきお迎えに来たんですけど、出かけられなくてお断りしたんですよ」
「それが間違えで、さっき三吉に『親方に頼みたいことがあるから、家にいらっしゃるかどうか聞いてこい』って言ったのを、間違えて『親方に来てください』って伝えたみたいなんです」
「あ、そういうことでしたか? 事情が分かったらいいじゃありませんか。それより、ご用件をお聞きしましょうか」
「じゃ、お話しますけど、実は去年から考えてるんですけど、先祖の位牌を入れる仏壇を作ろうと思って、三宅島の桑板を50枚くらい買ったんです。この仏壇は子孫代々ずっと受け継がれるものだし、火事にも耐えられるようにしたいんで、もしもの時は持って逃げられるようにしようと思って。でも、混乱の中では落としたり何かがぶつかったりすることもあるから、すごく丈夫じゃないとダメなんです。でも、丈夫にしすぎると木が分厚くなって重くなったり、飾りがきれいに見えなくなったりするから、一見普通に見えるけど、ある程度以上の衝撃には耐えられるように、すごく丈夫に作ってほしいんです。無理な注文ってことはわかってますけど…。それと、位牌を入れるものだから、できるだけ根性が卑しくて粗忽な職人には作りたくないと思ってて。で、親方は心掛けが誠実で、指物なら京都の利齋やこのあたりの清兵衛親方にも負けないって評判を聞いて、この仕事を頼みたいと思ったんです。手間代もいくらでも払います。どうか私の先祖への孝行のためにも、この図面を検討して頑張って作っていただけませんか?」
「なるほど、難しい仕事ですね。でも、やりましょう。この設計でやってみます…でも、急がないでくださいね。まずは板を送ってもらって見てください。板の乾燥具合によって仕事の進み方にも影響がありますんで」
「はい、わかりました…じゃ、明日板を送ります…あ、これは気持ちばかりですが、注文の印としてお納めしておきます」
「板を送って注文されるわけですから、手金なんていりません。仕上がりを見てみないと手間賃もわかりませんから、これはお預かりしておきます」
「そう言っていただければお預かりしておきますから、必要な時にいつでもおっしゃってください」
「お仕事の邪魔をしちゃってすみません…じゃ、何卒よろしくお願いいたします。お忙しいでしょうけど、浅草の方にお越しの際はぜひお立ち寄りください」

原文 (会話文抽出)

「御高名は予て承知していましたが、つい掛違いまして」
「私もお名前は存じて居りますが、用がありませんからお目にかゝりませんでした、シテ御用と仰しゃるのは」
「はい、お願い申すこともございますが先刻のお詫をいたします……三吉……そこへ出てお詫をしろ」
「親方さん先刻は口上を間違えまして失礼を致しました、何卒御免なさい」
「へい何でしたか小僧さん、何も謝る事アありません……えゝ旦那……先刻お迎いでしたが、出ぬけられませんからお断り申したんで」
「それが間違いで、先刻三吉に、親方に願いたい事があるから宅に御座るか聞いて来いと申付けたのを間違えて、親方に来てくださるように申したとの事でございます」
「ムヽ左様いう事ですか、訳さえ分れば宜いじゃアありませんか、それより御用の方をお聞き申しましょう」
「そんならお話し申しますが、実は私先年から心掛けて、先祖の位牌を入れて置く仏壇を拵えようと思って、三宅島の桑板の良いのを五十枚ほど購めましたが、此の仏壇は子孫の代までも永く伝わる物でもあり、又火事に焼けてならんものですから、非常の時は持って逃げる積りです、混雑の中では取落す事もあり、又他から物が打付る事もありますゆえ、余ほど丈夫でなければなりませんが、丈夫一式で木口が橋板のように馬鹿に厚くっては、第一重くもあり、お飾り申した処が見にくゝって勿体ないから、一寸見た処は通例の仏壇のようで、大抵な事では毀れませんように、極丈夫に拵えたいという無理な注文でもございますし、それに位牌を入れる物ですから、成るべくは根性の卑しい粗忽な職人に指させたくないと思って、職人を捜して居りました処、親方はお心掛が潔白で、指物にかけては京都の利齋当地の清兵衛親方にも優るという評判を聞及びましたから、此の仕事をお願い申したいので、手間料には糸目をかけません、何うぞ私が先祖への孝行にもなる事でございますから、この絵図面を斟酌して一骨折ってはくださるまいか」
「成程随分難かしい仕事ですが、宜うがす、此の工合に遣ってみましょう…だが急いじゃアいけませんよ、兎も角も板を遣してお見せなさい、板の乾き塩梅によっちゃア仕事の都合がありますから」
「はい、承知いたしました……そんなら明朝板をよこすことに致しましょう……えゝ是は少のうございますが、御注文を申した印までに上げて置きます」
「板をよこして注文なさるんですから手金なんざア要りません、出来上って見なければ手間も分りませんから、是はお預け申して置きます」
「左様いう事ならお預かり申して置きますから、御入用の節は何時でも仰しゃってお遣わしなさい」
「これはお仕事のお邪魔を致しました……そんなら何分宜しくお願い申します、お暇というはございますまいけれど、自然浅草辺へお出での節はお立寄り下さい」


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