三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「お上屋敷からのお遣い物で」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「「お屋敷からの差し入れです」
「はい」
「神原五郎治です。殿様の長いご不調、影ながら心配しておりました。奥様もご病気と聞きましたが、お見舞いにも行けず申し訳ありません。私の病気よりお殿様の病の方が心配だとよくおっしゃっています。今日はお見舞いの代りに私が参りました。これは水飴ですが、夜になると咳が出るとのことなので、咳を抑えるのに水飴がいいと聞いて、こちらは極上の水飴ですので、お召し上がればよくお眠りになれます。奥様は格別に心配され、お心を込めて用意されました。お早めにお召し上がりください」
「うん五郎治、ああ俺の病気は大したことないよ。まだ若いし、こんな病気ごときには負けない。調子がいい時は縁側くらいは歩くよ。ただ心配なのはお兄さんの病気ばかりだ。本当に心配だよ。お歳も歳だし、最近は悪いみたいだけど、どうだい?」
「はい、一昨日はかなり悪かったようですが、昨日から少しずつ回復に向かい、今朝はお粥を3椀ほど召し上がりました。その上、お力をつけるお魚も召し上がりましたが、この調子なら遠からず回復されると思います」
「うん、嬉しいね。俺が夜咳が出るのもつらいけど、そのつらい中でもお兄さんのことを心配してるんだ。俺の病気はどうでもいいから、どうか早くお兄さんの病気が回復しますように、影ながら祈ってるって伝えてくれ」
「はい、はい。奥様がお聞きになれば、さぞお喜びでしょう。自分のことを忘れ、ただ殿様のことばかりお考えになるのは、ああ、本当に私が使者として参りました五郎治も光栄に思います。今のひと言、すぐに帰って奥様に申し上げましょう。このようなお話を伺ったのは、本当に嬉しいことです」

原文 (会話文抽出)

「お上屋敷からのお遣い物で」
「はア」
「神原五郎治で、長の御不快蔭ながら心配致して居りました、また上に置かせられてもお聞き及びの通り御病中ゆえ、碌々お訪ね申さんが、予の病気より梅の御殿の方が案じられると折々仰せられます、今日は御病気伺いとして御名代に罷り出ました、是れは水飴でございますが、夜分になりますとお咳が出ますとのこと、其の咳を防ぎますのは水飴が宜しいとのことで、これは極製の水飴で、これを召上れば宜くお眠られます、上が殊の外御心配なされ、お心を入れさせられし御品、早々召上られますように」
「うむ五郎治、あゝ予の病気は大した事はない、未だ壮年の身で、少し位の病魔に負けるような事はない、快い時は縁側ぐらいは歩くが、只お案じ申上げるのはお兄様の御病気ばかり、誠に案じられる、お歳といい、此の程はお悪いようじゃが、何うじゃな」
「はア一昨日は余程お悪いようでございましたが、昨日よりいたして段々御快気に赴き、今朝などはお粥を三椀程召上りました、其の上お力になる魚類を召上りましたが、彼の分では遠からず御全快と心得ます」
「うむ悦ばしい、予が夜分咳の出るは余程せつないがの、其のせつない中にもお兄様をお案じ申上げて、予の病気は兎も角、どうか早くお兄上様の御病気御全快を蔭ながら祈り居ると申せ」
「はア、はア、そのお言葉を上がお聞きでござったら、嘸お悦びでございましょう、御病苦を忘れ、只お上のことのみ思召さるゝというのは、あゝ誠にお使者に参じました五郎治倶に辱のう心得ます、只今の御一言早々帰りまして、上へ申上げるでございましょう、実に斯様な事を承わりますのは、誠に悦ばしい事で」


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