三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「うむ、宜く言ってくれた、私も然うだろうと…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「「うん、よく言った。私もそうだろうとだいたい予想してたよ。よく言った」
「え、私がこれを言うと私が殺されます」
「いや、お前が殺されるようなことはしないよ。心配するな。ああ、本当に感心した。よく言った。これ、うちの殿様」
「はい」
「今、私が源兵衛に言ったことを全部分かったか?分かったら説明しな」
「何かおっしゃったようですが、難しくて全然分かりません。若い殿様に水飴をなめさせて、それから殿様にもなめさせて、それをなんですか、両方になめることを条件に扶持をくれるってことですか?」
「ははは、分からないか。いいよ、いいよ。分からなくても」
「それで、なんですか?飴屋さんが両方から扶持をもらうって?」
「いいよ、いいよ。分からないからこそ面白いのだ。とにかく俺が貴様の家に来たことと飴屋と話をしたことだけは絶対内に秘めてくれ。いいか?屋敷の人たちに……婆さんがまた籠を背負って大根や野菜を売りに出たときに、「秋月様が来られた」なんて家の人に言ったら困る。ここだけは確かに口止めしておくわよ。言ったら許さないよ。どこから知れても他に知る人はいないんだから、そのままにはしておかないからね」
「はい……どうか勘弁してください」
「いや、言わなければいいんだよ」
「言うわけではありません。婆さん、あなたはおしゃべりだから」
「言うとか言わないとか、分かんないけど、それじゃ誰が聞いても、殿様はうちに来られたことはないし、飴屋さんと話なんてしてないって言うしかないでしょ」
「そんなことを言う必要はないよ。絶対に言うな」
「はい、わかりました」
「源兵衛、毒虫を入れた水飴は大体もう完成してるか?」
「はい、明後日までには全部できます」
「明後日できる……よし、よく知らせてくれてありがとう。源兵衛、お前に何かほしいものを持たせたいんだけど。今は現金があまりないけど、これはあくまでお前に家に土産に何か買っていくお金だ。俺の気持ちだと思ってくれ」
「どういたしまして。私がこんなものをいただいたら」
「いや、遠慮せずに取って置いてくれ。それで、源兵衛、大体この人に心当たりはあるだろう?お前に頼んだ侍の名前は?これ、誰が頼んだんだ?」
「はい、これだけは、それを言えば切るとおっしゃいました。はい、いろいろこの書類に、私にその、血で爪印を押せと言われたので、少し爪先を切りました」
「そうか。言うのは気が引けるが、源兵衛、こう話してしまったから言うべきだろう」
「どうかそれだけは勘弁してください」
「言えないか?」
「はい、何卒お許しください」
「だが源兵衛、ここまで話をしておいて、依頼者の名前が言えないというのはおかしい。お前はまだ悪人に加担してるように思われる。お前が言わないなら、俺の方で言おうか」
「はい」
「神原五郎治兄弟か、新役の松蔭だな」
「よ、よくご存じで」
「どうもそっちの方だろうと目星をつけてた。ま、いいが、あの松蔭と神原兄弟は中々に悪知恵が働く奴らだ。いろいろ罠をかけて、俺が言ったことをお前に聞くかもしれないが、お前は絶対に言うな」
「どういたしまして。言えばすぐに私が殺されます。あなた様も言わないでください」
「私は絶対に言わない。悪い奴をうまく見つけて屋敷を安堵させることができたら、ぜひお前に5人扶持をやりたい」
「どういたしまして。悪人に加担した罪で、私はお手を打たれても仕方ありません。私は命さえ助かれば、扶持はいただかなくても結構です。出入だけは今まで通りお願いします」
「うん、了解した。一緒に帰ろうか?いや、途中で他人に会ったらまずいから、早く行け」
「ありがとうございます」

原文 (会話文抽出)

「うむ、宜く言ってくれた、私も然うだろうと大概推思して居った、宜く言ってくれた」
「えゝ私が此の事を申上げましたことが知れますと、私は斬られます」
「いや/\手前が殺されるような事はせん、決して心配するな、あゝ誠に感心、宜く言ってくれた、これ当家の主人」
「はい」
「今私が源兵衞に云った事が逐一分ったかえ、分ったら話して見るが宜い」
「なにか仰しゃったようでごぜえますが、むずかしくって少しも分りませんが、若え殿様に水飴を甜めさせて、それから殿様にも甜めさせて、それを何ですかえ両方へ甜めさせるような事にして御扶持をくれるんだって」
「あはゝゝ分らんか、宜しい、至極宜しい、分らんければ」
「それで何ですかえ、飴屋さんが御扶持を両方から貰って」
「宜しい/\、分らん処が妙だ、どうぞな私が貴様の家へ来て、飴屋と話をした事だけは極内々でいてくれ、宜いか、屋敷の者に……婆が又籠を脊負って、大根や菜などを売に来た時に、秋月様が入しったと長家の者に云ってくれちゃア困る、是だけは確かと口留をいたして置く、いうと肯かんよ、云うと免さんよ、何処から知れても他に知る者は無いのだから、其の儘にしては置かんよ」
「はい……どうか御免を」
「いや、云いさえしなければ宜しいのだ」
「いう処じゃアありません、婆さんお前は口がうるせえから」
「云うって云わねえって何だか知んねえものそれじゃア誰が聞いても、殿様は己ア家へおいでなすった事はごぜえません、飴屋さんとお話などはなせえませんと」
「そんな事を云うにも及ばん、決して云ってはならんぞ」
「はい、畏まりました」
「源兵衞、毒虫を入れた水飴は大概もう仕上げてあるかの」
「へえ、明後日は残らず出来ます」
「明後日出来る……よし宜く知らせてくれた辱ない、源兵衛手前に何ぞ望みの物を取らしたく思う、持合せた金子も少ないが、是はほんの手前が宅への土産に何ぞ買って行ってくれ、私が心ばかりだ」
「何う致しまして、私がこれを戴きましては」
「いや/\遠慮をせずに取って置いてくれ、就てはの、源兵衞大概此の方に心当りもある、手前に頼んだ侍の名前は、これ誰が頼んだえ」
「へえ、是だけは、それを言えば斬ると仰しゃいました、へえ、何うかまア種々そのお書物の中へ、私にその、血で爪印をしろと仰しゃいましたから、少し爪の先を切りました」
「左様か、云っては悪いか、併し源兵衞斯う打明けてしまった事じゃから云っても宜かろう」
「何卒それだけは御勘弁を」
「云えんかえ」
「へえ、何うもそれは御免を蒙ります」
「併し源兵衞、是までに話を致して、依頼者の姓名が云えんと云うのは訝しい、まだ手前は悪人へ与み致して居るように思われる、手前が云わんなら私の方で云おうか」
「へえ」
「神原五郎治兄弟か、新役の松蔭かな」
「よ好く御存じさまで」
「何うも其辺だろうと鑑定が附いていた、ま宜しいが、彼の松蔭並びに神原兄弟の者はなか/\悪才に長けた奴ゆえ、種々罠をかけて、私が云ったことを手前に聞くまいものでもないが、手前決して云うな」
「何う致しまして、云えば直ぐに私が殺されます、貴方様も仰しゃいませんように」
「私は決して云わん、首尾好く悪人を見出して御当家安堵の想いを為すような事になれば、何うか願って手前に五人扶持も遣りたいの」
「何う致しまして、悪人へ与み致しました罪で、私はお手打になりましても宜しいくらいで、私は命さえ助かりますれば、御扶持は戴きませんでも宜しゅうございます、お出入りだけは相変らず願います」
「うむ、承知いたした、一緒に帰ろうか、いや/\途中で他人に見られると悪いから、早く行け/\」
「有難うございます」


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