三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「あれまア、馬めえ暴れやアがる、久藏眠った…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「あれま、馬が暴れてるぞ。久蔵、寝てるのか……あれま、締まりのない戸だ。叩くより開けて入る方がいい。酔っ払って仰向けにぶっくり寝やがって。おーい、顔に虻が止まってるのに痛くないのか?起きろ!」
「あはー……眠ったなあ。どうもアハー(あくび)むにゃ/\/\。や、これは甲州屋の早四郎か。ずいぶん遅く来たなあ」
「うん、ちょっと相談しに来たから目ぇ覚ませよ」
「今日は沓掛まで行って峠を越して、帰りに友達に会って、坂本の宿はずれで一杯やって、酔っ払って帰ってきて、馬に首を洗わせずに転がって寝ちまった。眠たくてたまらないよ。今時分に出かけてきたなんて何だ?」
「ま、目を覚ませよ。覚めてくれよ」
「アハー」
「大あくびするなよ」
「何だ?」
「他のことじゃないんだけど、この間の話だけど、俺ん家の客人が病気になって、娘が一人付きっきりだ。いい女だよ」
「話聞いたよ。いい女で、お前のを狙ってるって。それでどうしたんだ?」
「あいつの連れの病人が死んだんだ」
「フーム、それは気の毒だな」
「それで、あの子を俺の嫁にもらおうと思って、いろいろ手なずけたんだ。あの子もまんざらでもないみたいで、謎をかけてくるんだ。『この病人が死んでしまえば、行き場のない心細い身の上です』って。それで親父に話したら、親父は欲張りだから、そんな女をもらってどうするんだって、全然相手にしてくれないんだ。お前が俺の親父に会って話をして、あの娘をもらうように頼んでくれないか?」
「なるほどな。どうも、お前んちの親父さんはずいぶん頑固で、他人の言うことは聞かない人だな。この前、荷を馬に積んで、お前んちの前で話してたら、親父さんが荷物を下ろしたりして、気の利かない馬方を突き飛ばして転ばせたりしてたけど、ずいぶん強い人で、話しても親父さんの気に入らなきゃダメだよ。アハー」
「あくび止せよ……これはちょっとだけど、お前、何か買ってきてくれ。夜も更けて何もないから、この銭で一杯飲んできてくれよ」
「それは気の毒だな。こんなにたくさんくれたのか。気の毒だなぁ。こんなに心配されちゃ済まないよ。この間、あの馬の十に聞いたんだが、やっぱり親父さんがよくないらしいよ。息子が今元気で、ちょうど嫁をもらってもいい時期だっていうのに、顔も良くてどこからでも嫁は来るだろうに、どうして嫁をもらいに行かないのかって、親父さんのことを悪く言って、お前のことをみんな褒めてたよ。男がいいから、女の方から来るだろうって」
「来るだろうって……どうも……親父が相談に乗ってくれないとダメだな」

原文 (会話文抽出)

「あれまア、馬めえ暴れやアがる、久藏眠ったかえ……あれまア締りのねえ戸だ、叩いてるより開けて入る方が宜い、酔ぱれえになって仰向にぶっくり反って寝っていやアがる、おゝ/\顔に虻が附着いて居るのに痛くねえか、起ろ/\」
「あはー……眠ったいに、まどうもアハー(あくび)むにゃ/\/\、や、こりゃア甲州屋の早四郎か、大層遅く来たなア」
「うん、少し相談打ちに来たアだから目え覚せや」
「今日は沓掛まで行って峠え越して、帰りに友達に逢って、坂本の宿はずれで一盃やって、よっぱれえになって帰って来たが、馬の下湯を浴わねえで転輾えって寝ちまった、眠たくってなんねえ、何だって今時分出掛けて来た」
「ま、眼え覚せや、覚せてえに」
「アハー」
「大え欠伸いするなア」
「何だ」
「他のことでもねえが、此間汝がに話をしたが、己ア家の客人が病気になって、娘子が一人附いているだ、好い女子よ」
「話い聞いたっけ、好い女子で、汝がねらってるって、それが何うしただ」
「その連の病人が死んだだ」
「フーム気の毒だのう」
「就ては彼の娘を己の嫁に貰えてえと思って、段々手なずけた処が、当人もまんざらでも無えようで、謎をかけるだ、此の病人が死んでしまえば、行処もねえ心細い身の上でございますと云うから、親父に話をした処が、親父は慾張ってるから其様な者を貰って何うすると、頓と相手になんねえから、汝が己ア親父に会って話を打って、彼の娘を貰うようにしちゃアくんめえか」
「然うさなア、どうもこれはお前ん処の父さまという人は中々道楽をぶって、他人のいう事ア肯かねえ人だよ、此の前荷い馬へ打積んで、お前ん処の居先で話をしていると、父さまが入り口へ駄荷い置いて気の利かねえ馬方だって、突転ばして打転ばされたが、中々強い人で、話いしたところが父さまの気に入らねえば駄目だよ、アハー」
「欠伸い止せよ……これは少しだがの、汝え何ぞ買って来るだが、夜更けで何にもねえから、此銭で一盃飲んでくんろ」
「気の毒だのう、こんなに差し吊べたのを一本くれたか、気の毒だな、こんなに心配されちゃア済まねえ、此間あの馬十に聞いたゞが、どうも全体父さまが宜くねえ、息子が今これ壮んで、丁度嫁を娶って宜い時分だに、男振も好し何処からでも嫁は来るだが、何故嫁を娶ってくれねえかと、父さまを悪く云って、お前の方を皆な誉めている、男が好いから女の方から来るだろう」
「来るだろうって……どうも……親父が相談ぶたねえから駄目だ」


青空文庫現代語化 Home リスト