GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』
現代語化
「こちらへどうぞ。おや、宿の亭主さん」
「はい。今、婆さんから伺いました。大変お驚きましたが、お連れの方はお看病の甲斐もなくお亡くなりになったのですね」
「ありがとうございます。長い間お世話になりました。特に御子息が朝晩お見舞いくださって、親切にしていただいたので、何かお礼をしたいと思っております。患者さんもお看病が功を奏したと喜んでおられました。私もお看病が届けばと願いましたが、命数というものは定まっています。今亡くなり、本当に残念なことをしました」
「いやあ、さぞお力落しでしょう。本当に気の毒なことです。ところで、お亡くなりになった遺体は、江戸にお戻りになるにしても、信州にお送りになるにしても、背負って行くわけにはいきませんから、この村に葬るよりほか方法はないでしょうが、火葬になさって骨だけお持ちになるのか、その辺を伺いたいものでして」
「はい、どこにも知人がおりませんので、火葬にしてこの村に葬って、骨だけ持ち帰ろうと思います。ご覧のとおり、これからは私一人ですので、何かと世話がなく済むよう、髪だけでも江戸の親に届けられればありがたいです。それに、当人は火葬でも土葬でもよいと遺言してお亡くなりになりましたので、どうか近くの寺に埋葬していただけるようお願いしたいのです」
「なるほど。宿泊客ではありますが、どこどこの誰という確固たる証拠がないと、寺もなかなか厳しくて引き受けてくれません。私の親戚か縁者がこちらに来て、亡くなったような話をしてお願いしてみましょうか」
「なに、そんな必要はありません。裏手の洪願寺のお坊さんは親しくさせていただいていますし、お願いしてみましょう。本当に物わかりのいいお坊さんで、相当おちゃめです。昔は叩き鉦を叩いて飴を売っていたお笑い者ですよ。お金がなければいい、ただ埋めてあげればいいんだなんて言う気の良いお坊さんです。その代わりお経は読めないようですが、お金に困って困っているなら、いくらも多くはないですが、いくらかつぎ込んであげよう」
「何だ、こら。お客様に失礼じゃないか。お前がお客様にお金を出してあげるとは何事だ。そんなばかげたことを言うな」
「父さんはいつも文句を言うけど、お金がなければ出すと言ってくれるんだからいいじゃないか」
「そんなことはどうでもいいから、早く洪願寺に行ってお願いしてこい」
原文 (会話文抽出)
「はい、御免下せえ」
「此方へお入んなさいまし、おや／＼宿の御亭主さん」
「はい、只今婆アから承わりまして、誠に恟りいたしましたが、お連さまは御丹誠甲斐もない事で、お死去になりましたと申す事で」
「有難う、長い間種々お世話になりました、殊に御子息が朝晩見舞っておくれで、親切にして下さるから何ぞお礼をしたいと思って居ります、病人も誠に真実なお方だと悦んで居りました、私も丹誠が届くならばと思いましたが、定まる命数でございまする、只今亡くなりまして、誠に不憫な事を致しました」
「いやどうも、嘸お力落しでございましょう、誠にお気の毒な事でございます、時に、あゝそれでもって伺いますが、お死去りなすった此の死骸は、江戸へおいでなさるにしても、信州へお送りになるにしても、死骸を脊負って行く訳にもいかないから此の村へ葬るより他に仕方はございますまいが、火葬にでもなすって、骨を持って入らっしゃいますか、其の辺の処を伺って置きたいもので」
「はい、何処と云って知己もございませんから、どうか火葬にして此の村へ葬り、骨だけを持ってまいりとう存じますが、御覧の通り是からは私一人でございますから、何かと世話のないように髪の毛だけでも江戸の親元へ参れば宜しゅうございますから、殊に当人は火葬でも土葬でも宜いと遺言をして死去りましたから、どうぞ御近処のお寺へお葬り下さるように願いたいもので」
「左様でございますか、お泊り掛のお方で、何処の何という確かりとした何か証がないと、お寺も中々厳しくって請取りませんが、私どもの親類か縁類の人が此方へ来て、死んだような話にして、どうか頼んで見ましょう」
「なに然うしねえでも宜い、此の裏手の洪願寺さまの和尚様は心安くするから頼んで上げよう、まことに手軽な和尚様で、中々道楽坊主だよ、以前は叩鉦を叩いて飴を売ってた道楽者さ、銭が無ければ宜い、たゞ埋めて遣んべえなどゝいう捌けた坊様だ、其の代りお経なんどは読めねえ様子だが、銭金の少しぐれえ入るような事があって困るなら、沢山はねえが些とべいなら己が出して遣るべえ」
「何だ、これ、お客様に失礼な、お前がお客さまに金を出して上げるとは何だ、そんな馬鹿な事をいうな」
「父は何ぞというと小言をいうが、無ければ出してくれべえと云うだから宜かっぺえじゃアねえか」
「其様な事ア何うでも宜いから、早く洪願寺へ行って願って来い」