三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「あの忠平や」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「忠平」
「はい」
「二番目の薬ができたから、我慢して飲んでね。ちゃんと飲んでいてよ。じゃないと困るわ」
「ありがとうございます。でも、お嬢様。私の病気は死病だと諦めています。もうお薬を飲んでも効果はありません。あと二、三日でしょう」
「そんなこと言わないでよ。私が困っちゃうじゃない。祖五郎はお国に帰ったし、喜六は亡くなったし、頼りになるのはあなたしかいないの。あなたがいなければ、お屋敷に帰ったり江戸に行ったりすることもできないわ。あなたは私にとって家来じゃない。伯父であり親でもある大切な人なの。そんなあなたに死なれたら、私一人残されては何もできませんよ」
「ありがとうございます……お恥ずかしいお言葉です。ちょっとお手伝いしただけで、そんなに褒めていただくなんて。私のような家来を親や伯父と思うお言葉は、冥土の土産にもってこいです。でも、以前とは違って没落なさって、こんなお身の上になるとは。あなたのことが心配です。私が死んだら、他に頼れる人もいないでしょう。だから、昨夜あなたがお見舞い疲れでよく眠っていらっしゃる間に、手紙を書いておきました。お父さんは字が書けないので、仮名で詳しく書いておきました。江戸に行ったら春木町の私の家に寄って、お父さんに会ってください。お父さんはあなたのことしか心配していないし、年老いたとはいえ元気なので、きっと力になってくれると思います。私が死んだという手紙を出したら、びっくりして飛んでくる人なので、知らせない方がいいと思ったんです。どうかお嬢様、私が死んだらこのお寺に埋葬してください。道中は危ないですから、お気をつけて。江戸に行ったら、私の父、岩吉を頼りにしてください」
「わかったわ。でも、そんなことになったら、私どうしたらいいの?あなたが死んじゃったら、何もできなくなるわ。なんとか治ってよ。病は気からって言うから、忠平、しっかりしてね」
「いえ、今回は無理だと思います」
「長い間、世話になりました」

原文 (会話文抽出)

「あの忠平や」
「はい」
「お薬の二番が出来たから、お前我慢して嫌でもお服べ、確かりして居ておくれでないと困るよ」
「有難う存じますが、お嬢様私の病気も此の度は死病と自分も諦めました、とても御丹誠の甲斐はございませんから、どうぞもお薬も服まして下さいますな、もう二三日の内にむずかしいかと思います」
「お前そんなことを云っておくれじゃア私が困るじゃアないか、祖五郎はお国へ行き、喜六は死に、お前より他に頼みに思う者はなし、一人ではお屋敷へ帰ることも出来ず、江戸へ行ってもお屋敷近い処へ落着けない身の上になって、お前を私は家来とは思わない、伯父とも親とも力に思う其のお前に死なれ、私一人此処に残ってはお前何うする事も出来ませんよ」
「有難う……勿体ないお言葉でございます、僅か御奉公致しまして、何程の勤めも致しませんのに、家来の私を親とも伯父とも思うという其のお言葉は、唯今目を眠りまして冥土へ参るにも好い土産でございます、併し以前とちがって御零落なすって、今斯う云うお身の上におなり遊ばしたかと存じますと、私は貴方のお身の上が案じられます、どうぞ私の亡い後は、他に入っしゃる所もございません故、昨夜貴方が御看病疲れで能く眠っていらっしゃる内に、私が認いて置きました手紙が此処にございます、親父は無筆でございますから、仮名で細かに書いて置きましたから、あなたが江戸へ入らっしゃいまして、春木町の私の家へ行って、親父にお会いなさいましたら、親父が貴方だけの事はどうかまア年は老っても達者な奴でございますから、お力になろうと存じます、此処から私が死ぬと云う手紙を出しますと、驚いて飛んで来ると云うような奴ゆえ、却って親父に知らせない方が宜いと存じますから、何卒お嬢さん、はッはッ、私が死にましたら此処の寺へ投込みになすって道中も物騒でございますから、お気をお付けなすって、あなたは江戸へ入っしゃいまして親父の岩吉にお頼みなすって下さいまし」
「あい、それやア承知をしましたが、もし其様なことでもあると私はまア何うしたら宜かろう、お前が死んでは何うする事も出来ませんよ、何うか癒るようにね、病は気だというから、忠平確かりしておくれよ」
「いえ何うも此度はむずかしゅうございます」
「長らく御恩になりました」


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