三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「一盃飲むが宜い、今日は雪が降って寒いから…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「1杯飲もう。今日は雪が降って寒いので、巡回は私一人でしよう。槍だけでいい。この雪では誰も通りゃしないだろうから、咎める奴もいないさ。私一人で大丈夫だ。これ、1杯飲んでくれ」
「野上」
「ん?」
「今回、新規でお抱えになった松蔭様はすごい方ですね」
「あいつは別格だ。ちょっと寄ると寒いだろう。1杯飲んだらいいだろう。仮に200、300両でもお金を出して、目鼻のきくところが違うな。苦労した奴ってのは。もともとご当家様より立派な大名の御家臣で、とても立派な方が貧乏してしまって苦労した人だから、ずば抜けている。感心なことだ。夜は寒いからやめろと、自分だけで見回りをして、勤めを怠けてはいない。そうすると、こっちなんか寝ているばっかりで、まったくどうしようもないな」
「本当にその通りで…おっと、噂をすれば何とやらで、いらっしゃった」
「ああ、どうも寒いですね」
「あ、大変ご苦労様でした。また見回りの時間が来たので、行っていただかなくてはなりません。昼間、お客さんが来て、また紛失物でもあると困るから、仁助、私は一人で回ろう。雪がチラチラと降ってきたようだ」
「なるほど、降ってきましたね」
「かなり降ってきたな。提灯も別に要るまい。回ればそれでいいんだ。私は新役だから、これが役目だ。お主たちは私に連れられた身の上だ。ましてや、1人や2人よからぬ奴が出てきても、取り押さえるだけの力は十分にある。別に自慢しているわけではないが、この雪が降る中に、連れて行かれるのも迷惑だろうから」
「面目ない次第ですが、こちらなんか、よからぬ奴が出てくると、真っ先に逃げてしまい、下手すると石につまずいて膝を怪我する始末でございます。恐れ入ります」
「御家中で、何でも気がつくのは渡辺殿と秋月殿です。寒いだろうから、寒さをしのぐために酒飲んだらいいと言って、お酒をくださいました。こんな立派なお酒は下屋敷にはないので、このように徳利に入れて持って来ました。1升くらい分けよう。別に下のおつまみはないので、このお金で何かつまみを買って、夜に蕎麦屋が来たら窓から買ってくれ」
「恐れ入りました。何もお礼のしようがありません。いつもお噂ばかり申しております。本当に、あまりにもありがたく…」
「雪がひどくなってきたので、こっちも大変だ。私一人で大丈夫だ。提灯と蓑笠を貸せ」

原文 (会話文抽出)

「一盃飲むが宜い、今日は雪が降って寒いから巡検は私一人で廻ろう、なに槍持ばかりで宜しい、此の雪では誰も通るまいから咎める者も無かろう、私一人で宜しい、これで一盃飲んでくれ」
「野上イ」
「えゝ」
「今度新規お抱えになった松蔭様はえらいお方だね」
「彼は別だね一寸来ても寒かろう、一盃飲んだら宜かろうと、仮令二百でも三百でも銭を投出して目鼻の明く処は、どうも苦労した人は違うな、一体御当家様よりは立派な大名の御家来で立派なお方が貧乏して困って苦労した人だから、物が届いている、感心な事だ、夜は寒いから止せ/\と御自分ばかりで見廻りをして勤めに怠りはない、それから見ると此方等は寝たがってばかりいて扨て仕様がないの」
「本当にどうも……おゝ噂をすれば影とやらで、おいでなすった」
「えゝどうもお寒うございます」
「あゝ大きに御苦労だが、又廻りの刻限が来たから往ってもらわなければならん、昼間お客来で又た遺失物でもあるといかんから、仁助私が一人で見廻ろう、雪がちらちらと来たようだから」
「成程降って来ましたね」
「よほど降って来たな、提灯も別に要るまい、廻りさえすれば宜いのだ、私は新役だからこれが務めで、貴様達は私に連れられる身の上だ、殊に一人や二人狼藉者が出ても取って押えるだけの力はある、といって何も誇るわけではないが、此の雪の降るに、連れて往かれるのも迷惑だろうから」
「面目次第もありませんが、此方等は狼藉者でも出ると、真先に逃出し、悪くすると石へ蹴つまずいて膝ア毀すたちでありますよ、恐入りますな」
「御家中で万事に心附のある方は渡邊殿と秋月殿である、寒かろうから寒さ凌ぎに酒を用いたら宜かろうと云って、御酒を下すったが、斯様な結構な酒はお下屋敷にはないから、此の通り徳利を提げて来た、一升ばかり分けてやろう別に下物はないから、此銭で何ぞ嗜な物を買って、夜蕎麦売が来たら窓から買え」
「恐れ入りましたな、何ともお礼の申そうようはございません、毎もお噂ばかり申しております実に余り十分過ぎまして……」
「雪が甚く降るので手前達も難儀だろう、私一人で宜しい提灯と赤合羽を貸せ/\」


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