三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』 「はい少々御免下さいまし、權六申上げます」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『菊模様皿山奇談』

現代語化

「はい、ちょっと失礼します。権六です」
「なんだ、権六か」
「あの、実はこの皿を割ったのは私なんです」
「なに、お前が割った……そんなアホなことを言わずに控えていろ」
「いや、控えてはいられません。よく考えれば考えるほど、ああひどいことをしたと思います」
「何をそんなに思った?」
「殿様、皿を割ったのはこの権六です」
「え……お前はどうして割ったんだ?」
「はい、本当に不調法で」
「不調法だって、お前は台所にばっかりいて、夜は自分の部屋に行って寝るだけじゃねえか。蔵前の道具係のところに行く身分のお前が、どうして割ったんだ?」
「さっき箱の蝶番が外れたので、何とか修理してくれってことで、私が糊を持って修理しようと、皿のそばに行ったのがことの始まりです」
「権六さん、あなたが割ったなどと……」
「おい、黙ってろ」
「本当にありがとうございます。私はこの千代さんの家の長年のお抱えの家来筋で、丹治という者です。なるほど、これはこの人が割ったかもしれないと思います。割りそうな顔つきをしていますから」
「黙ってな。お前の知ったことじゃねえ。ええ、殿様、本当に恥ずかしい話なんですが、この千代がこちらに奉公に参った時から、私は千代に惚れたんです。惚れないなんてレベルじゃありません。寝ても覚めても目の前にちらついて、ちょっとも忘れる暇がありません。でも奥で働く女だから、台所には滅多に出てこないんですけど、時々台所に出てくる時に千代の顔を見て、ああ、なんとかしたいと思って、何度も手紙を贈って口説いたんです」
「黙れ。お前がどうもその態度や顔色にも恥じず、千代に惚れたなどと怪しからん奴だな。それに、お前が割ったっていうのも本当じゃあるまい。ばかばかしい」
「それはあなた、色恋なんていうものは、顔や姿だけのもんじゃありません。年齢が違うのも、自分の醜い器量も忘れてしまって、お千代のことばかり気にかけて、眠ることもできず、毎晩夢に見るような始末で、こんなに私が思って手紙を渡しても、丸めて捨てられては悔しいじゃないですか」
「なんだ……お父さんの前で恥じることもせずに、怪しからんことを言う奴だ」

原文 (会話文抽出)

「はい少々御免下さいまし、權六申上げます」
「なんだ權六」
「へえ、実は此の皿を割りました者は私だね」
「なに手前が割った……左様な白痴たことを云わんで控えて居れ」
「いや控えては居られやせん、よく考えて見れば見る程、あゝ悪い事をしたと私ゃア思いやした」
「何を然う思った」
「大殿様皿を割ったのは此の權六でがす」
「え……其の方は何うして割った」
「へえ誠に不調法で」
「不調法だって、其の方は台所にばかり居て、夜は其の方の部屋へまいって寝るのみで、蔵前の道具係の所などへ参る身の上でない其の方が何うして割った」
「先刻箱の棧が剥れたから、どうか繕ってくんろてえから、糊をもって私が繕ろうと思って、皿の傍へ参ったのが事の始まりでごぜえます」
「權六さん、お前さんが割ったなどと……」
「えーい黙っていろ」
「誠に有難うごぜえます、私は此の千代さんの家の年来の家来筋で、丹治と云う者で、成程是れは此の人が割ったかも知れねえ、割りそうな顔付だ」
「黙って居なせえ、お前らの知った事じゃアない、えゝ殿様、誠に羞かしい事だが、此の千代が御当家へ奉公に参った其の時から、私は千代に惚れたの惚れねえのと云うのじゃアねえ、寝ても覚めても眼の前へちらつきやして、片時も忘れる暇もねえ、併し奥を働く女で、台所へは滅多に出て来る事はありやせんが、時々台所へ出て来る時に千代の顔を見て、あゝ何うかしてと思い、幾度か文を贈っちゃア口説いただアね」
「黙れ、其の方がどうも其の姿や顔色にも愧じず、千代に惚れたなどと怪しからん奴だなア、乃で手前が割ったというも本当には出来んわ、馬鹿々々しい」
「それは貴方、色恋の道は顔や姿のものじゃアねえ、年が違うのも、自分の醜い器量も忘れてしまって、お千代へばかり念をかけて、眠ることも出来ず、毎晩夢にまで見るような訳で、是程私が方で思って文を附けても、丸めて棄てられちゃア口惜しかろうじゃアござえやんせんか」
「なんだ……お父さまの前を愧じもせんで怪しからん事をいう奴だ」


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