佐々木味津三 『十万石の怪談』 「嗅いでみい! 想い想われて契った恋女房で…

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青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『十万石の怪談』

現代語化

「嗅いでみろ! 想い想われて結婚した奥さんだって、やっぱり女は魔物だっていう匂いがこの袖にしみついてるはずだ。よく嗅いでみろ!」
「……?」
「なぁ! どうだ! 合点がいったか!」
「よっ。まさにこの匂いは!――」
「そうよ! お前が恋女房と自慢してたあの女の髪の毛の匂いよ。ウフフ。迷いの夢が覚めたか?」
「ど、ど、どうしたんだ! この匂いがお前の袖についてるとは、何をしたんだ! ど、ど、どうしたんだって!」
「別に何もしてないよ。忘れもしない夕暮れ時さ。殿から急なお呼び出しがあったから、お前を誘いに行ったんだけど、どこに行ったのか見つからないんだ。だからすぐ引き返そうと出てきたところ、もしあのお袖が、――って恥ずかしそうに呼びとめたから、ちらっと見るとなるほどほつれてたんだ。やさしい手で縫ってもらってるうちに、どちらが先にどうなったのか、――それから先は言わなくても分かるよね。この通り片袖に髪の毛の油がしみついてるっていうんだから、大体察しがつくでしょ。どうだ! 千之! 未練の夢が覚めたか!」
「なんだって。お前と、あれが! あれと、お前が! ……」

原文 (会話文抽出)

「嗅いでみい! 想い想われて契った恋女房ですらも、やはり女は魔物じゃと言う匂いがこの袖にしみついている筈じゃ。よう嗅いでみい!」
「……?」
「のう! どうじゃ! 合点がいったか!」
「よっ。まさしくこの匂いは!――」
「そうよ! お身が恋女房と自慢したあの女の髪の油の匂いじゃわ。ウフフ。迷いの夢がさめたか」
「ど、どう、どうしたのじゃ! この匂いがおぬしの袖についているとは、何としたのじゃ! ど、どうどうしたと言うのじゃ」
「どうでもない。忘れもせぬ夕暮どきじゃ。殿より火急のお召しがあったゆえ、おぬしを誘いに参ったところ、どこへいっていたのかるすなのじゃ。それゆえすぐに引返そうと出て参ったところ、もしあのお袖が、――と恥しそうに呼びとめたゆえ、ひょいと見るとなる程綻びておったのじゃ。やさしいお手で縫うて貰うているうちに、どちらが先にどうなったやら、――それからあとは言わぬが花よ。この通り片袖に髪の油がしみついたと言えば大凡察しがつこうわ。どうじゃ! 千之! 未練の夢がさめたか!」
「なにっ。うぬと、あれが! あれと、うぬが! ……」


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