佐々木味津三 『十万石の怪談』 「月か……。月にかこつけて了うたか。いやよ…

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青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『十万石の怪談』

現代語化

「月か……。月に紛れてしまったか。まあまあいいや。乱世だ。乱世なんだから、月を見て泣く若侍ぐらいいてもいいだろう。アハハハ……。そう言えば月の奴もなんだか気持ち悪いくらいに光り始めたな。――なぁ! お前たち!」
「怪談でもするか! なぁ! 気を張りつめてるんだ。今から怪談を始めようぜ」
「……?」
「……!」
「ハハハ……。みんな首をかしげてんな。長国、急に気が立ってきたんだ。まだ使いが大広間から来ないってことは、相変わらず年寄りたちが小田原評定をやってるんだろうな。呑気な奴らめ。イライラするな。なぁ! どうだ。一つ二つゾッとするような怪談でも聞こうぜ」
「……!」
「……?」
「まだ首をかしげてんな。長国の気持ちが分からないのか! 考えてみろよ。今この瞬間も、山一つ向こうの会津では、武道の最後を飾るために、みんな必死に籠城の準備をしてるんだろうな。いや、中将様もきっと自分の思い通りにやるために、寝ずに休まず動き回ってるんだろうから、その姿を想像すると、長国は落ち着いてられないんだ。せめて怪談話を聞いて、心を引き締めておきたいんだ。誰か一つ二つ、気持ち悪い話を持ってないか。遠慮なく話してみろよ」
「なるほどいい考えですね。たしかに怪談なら、気が引き締まるどころか、体の中まで寒くなるとか思いそうです。それじゃあ、私が一つ――」

原文 (会話文抽出)

「月か……。月にかこつけて了うたか。いやよいよい。乱世じゃ。乱世ともならば月を見て泣く若侍もひとりやふたり出て参ろうわ。アハハハ……。そう言えば月の奴めもいちだんと気味わるう光り出して参った。――のう! そち達!」
「怪談をするか! のう! 気を張りつめていたいのじゃ。今から怪談を始めようぞ」
「……?」
「……!」
「ハハハ……。いずれも首をひねっておるな。長国、急に気が立って参ったのじゃ。いまだに何の使者も大広間から来ぬところを見ると、相変らず老人達が小田原評定の最中と見ゆる。気の永い奴等めがっ。じれじれするわ。のう! どうじゃ。一つ二つぞっとするような怪談聞こうぞ」
「……!」
「……?」
「まだ不審そうに首をひねっておるな。長国の胸中分らぬか! 考えてもみい。今宵こうしているまも、山一つ超えた会津では、武道の最後を飾るために、いずれも必死となって籠城の準備の最中であろうわ。いや、中将様も定めし御本懐遂げるために、寝もやらず片ときの御油断もなく御奔走中であろうゆえ、蔭乍ら御胸中拝察すると、長国、じっとしておれぬ。せめて怪談なときいて、心をはりつめ、気を引きしめていたいのじゃ。誰ぞ一つ二つ、気味のわるい話持ち合せておるであろう。遠慮のう語ってみい」
「なるほどよいお思いつきで厶ります。いかさま怪談ならば、気が引締るどころか、身のうちも寒くなるに相違厶りませぬ。なら、手前が一つ――」


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