佐々木味津三 『老中の眼鏡』 「それにしてもあんまりで厶ります……。殿様…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『老中の眼鏡』

現代語化

「それにしてもひどすぎるよ……。殿様もひどすぎる……」
「ダメだ! 言うな! ダメだ!」
「殿様を恨んでいるわけじゃない。私たちを隠れて付き合わせた二人に罪があるんです。正直に全部早く話していれば、きっと許してくれたはずなのに、隠していたのが悪かったんだ。ダメだ! 殿様を恨んじゃダメだ!」
「いいえ言います。言います。隠れた恋だろうが、そんなにひどいことをしたわけじゃないでしょ。それなのに、何も調べもせずに追放するなんてひどすぎる。ひどすぎる」
「ダメだと言ったらいけないんだって! どんな仕置きを受けようとも、恩を受けた殿様の悪口を言ってはいけない。手討ちにならなくてよかったと思えよ。もう言うな!」
「でも、でも……」
「まだ言うのか!」
「はい、言います! 結ばれたかったから言います。私はともかく、あなたは8歳から仕えていて、一番殿様に可愛がられたお気に入りでしょ。親だと思って甘えていいってまで殿様が言ってたのに、それを、それを、ただの家臣みたいに、不倫は家の掟違反だから、手討ちだって言わなかっただけって仕打ちが、憎いです。殿様が憎いです」

原文 (会話文抽出)

「それにしてもあんまりで厶ります……。殿様もあんまりで厶ります。……」
「ならぬ! 言うでない! なりませぬ!」
「殿様をお恨みに思う筋は毫もない。お目を掠め奉った二人にこそ罪があるのじゃ。正直にこれこれとも少し早うお打ちあけ申し上げておいたら、屹度御許しもあったものを、今までお隠し申し上げておいたのが悪かったのじゃ。なりませぬ! 殿様にお恨み申し上げてはなりませぬ!」
「いいえ申します。申します。隠した恋では厶りましょうと、あれほどもおきびしゅうお叱りを受けるような淫らな戯むれでは厶りませぬ。それを、それを、只のひと言もお調べは下さりませいで、御追放遊ばしますとはあんまりで厶ります。あんまりで厶ります」
「ならぬと言うたらなぜ止めませぬ! どのような御仕置きうけましょうとも、御恩うけた殿様の蔭口利いてはなりませぬ。御手討ちにならぬが倖わせな位じゃ。もう言うてはなりませぬ!」
「でも、でも……」
「まだ申しますか!」
「あい、申します! 晴れて添いとげたいゆえに申します。わたくしはともかく、あなた様は八つからお身近く仕えて、人一倍御寵愛うけたお気に入りで厶ります。親とも思うて我まませい、とまでお殿様が仰せあった程のそなた様で厶ります。それを、それを、只の御近侍衆のように、不義はお家の法度、手討ちじゃと言わぬばかりな血も涙もないお仕打ちは、憎らしゅう厶ります。殿様乍らお憎らしゅう厶ります」


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