佐々木味津三 『老中の眼鏡』 「のう館!」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『老中の眼鏡』

現代語化

「館、聞けよ」
「はぁ」
「人間ってさ」
「はぁ」
「首を覚悟して事に当たる時って、気持ちいいんだぜ。どう思う?」
「分かりません。急に何の話ですか?」
「決心のことだよ。国を背負って立つ者は、国難に当たるときは果断に、果断に、最後まで果断でなきゃダメなんだ。命は惜しみたくない」
「…………」
「泣くなよ。泣くのはまだ早いだろ。それに大老の井伊って人、立派な最期だったよな。国策を掲げて政界に立つ者は、ああいう最期を迎えたいもんだ。うらやましいよ」
「お、お言葉に詰まります……」
「泣くな。お前みたいな男が何だ。――天の川がきれいだな。風も冷たくなった。少し急ごうぜ」
「待て。何者だ!」
「待てって何を!高貴な方だぞ。控えろ!」
「騒ぐな」
「姿からして、浪士取締り見廻り隊だな」
「……?」
「そうだろ。俺様は安藤だ。対馬だ」
「あっ。でしたか! 存じ上げず失礼しました。薩州浪士取締り早瀬助三郎組下五名の者です」
「早瀬の組下なら腕利きだろうな。夜勤ご苦労さんだ。しっかり警備しろよ」
「もちろんです。御老中様もお気をつけください――」

原文 (会話文抽出)

「のう館!」
「はっ」
「人はな」
「はっ」
「首の座に直っておる覚悟を以て、事に当ろうとする時ほど、すがすがしい心持の致すことはまたとないな。のう。どう思うか」
「御諚よく分りかねまする。不意にまた何を仰せられまするので厶ります」
「大丈夫の覚悟を申しておるのじゃ。国運を背負うて立つ者が、国難に当って事を処するには第一に果断、第二にも果断、終始果断を以て貫きたいものじゃ。命は惜しみたくないものよ喃」
「…………」
「泣いておるな。泣くにはまだ早かろうぞ。それにつけても大老は、井伊殿は、立派な御最期だった。よかれあしかれ国策をひっ提て、政道の一線に立つものはああいう最期を遂げたいものじゃ。羨やましい事よ喃」
「申、申しようも厶りませぬ……」
「泣くでない。そち程の男が何のことぞ。――天の川が澄んでおるな。風も冷とうなった。少し急ぐか」
「まてっ。何者じゃっ」
「まてとは何のことじゃ!高貴のお方で厶るぞ。控えさっしゃい!」
「騒ぐでない」
「姿の容子、浪士取締り見廻り隊の者共であろうな」
「……?」
「のう、そうであろうな。予は安藤じゃ。対馬じゃ」
「あっ。左様で厶りましたか! それとも存ぜず不調法恐れ入りまして厶ります。薩州浪士取締り早瀬助三郎組下の五名に厶ります」
「早瀬が組下とあらば腕利きの者共よな。夜中役目御苦労じゃ。充分に警備致せよ」
「御念までも厶りませぬ。御老中様もお気をつけ遊ばしますよう――」


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