GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『三右衛門の罪』
現代語化
「たぶんそうだと思います。その日は急に雪が降ったので、私は傘をさしながら、馬場のところを通りました。ちょうど仲間もいなくて、雨具も着ていなかったので。すると風が強まったと同時に、左から雪が吹き降りました。私は咄嗟に開けかけた傘を斜め左に回しました。するとその瞬間、数馬が斬り込んできたので、私に傷を負わせずに傘だけを斬ったんです」
「声もかけずに斬ってきたんですか?」
「かけなかったと思います」
「そのときには相手を誰だと思ったんですか?」
「考える余裕がありませんでした。私は傘を斬られたと同時に、思わず右に飛び退きました。下駄は脱げていたようです。すると、再び斬りかかってきました。2本目は私の羽織の袖を5寸ほど斬り裂きました。私は飛び退きながら、抜刀して相手を払いました。数馬の腰をかっ捌いたのはこのときだったと思います。相手が何か言いました。………」
「何かって?」
「何を言ったのかわかりません。ただすごい声で何か言ったんです。私はそのとき、数馬だと確信しました」
「それは声に聞き覚えがあったからですか?」
「いえ、そういうことではありません」
「ではなぜ数馬だとわかったんですか?」
原文 (会話文抽出)
「数馬は確かに馬場の下にそちを待っていたのじゃな?」
「多分はさようかと思いまする。その夜は急に雪になりましたゆえ、わたくしは傘をかざしながら、御馬場の下を通りかかりました。ちょうどまた伴もつれず、雨着もつけずに参ったのでございまする。すると風音の高まるが早いか、左から雪がしまいて参りました。わたくしは咄嗟に半開きの傘を斜めに左へ廻しました。数馬はその途端に斬りこみましたゆえ、わたくしへは手傷も負わせずに傘ばかり斬ったのでございまする。」
「声もかけずに斬って参ったか?」
「かけなかったように思いまする。」
「その時には相手を何と思った?」
「何と思う余裕もござりませぬ。わたくしは傘を斬られると同時に、思わず右へ飛びすさりました。足駄ももうその時には脱いで居ったようでございまする。と、二の太刀が参りました。二の太刀はわたくしの羽織の袖を五寸ばかり斬り裂きました。わたくしはまた飛びすさりながら、抜き打ちに相手を払いました。数馬の脾腹を斬られたのはこの刹那だったと思いまする。相手は何か申しました。………」
「何かとは?」
「何と申したかはわかりませぬ。ただ何か烈しい中に声を出したのでございまする。わたくしはその時にはっきりと数馬だなと思いました。」
「それは何か申した声に聞き覚えがあったと申すのじゃな?」
「いえ、左様ではございませぬ。」
「ではなぜ数馬と悟ったのじゃ?」