芥川龍之介 『三右衛門の罪』 「三右衛門、数馬はそちに闇打ちをしかけたそ…

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青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『三右衛門の罪』

現代語化

「三右衛門、数馬がお前に闇討ちを仕掛けたそうだな。何かお前に因縁があるってわけか。何で因縁があるんだ?」
「何で因縁があるのかわかりません」
「お前に心当たりはないか?」
「心当たりになるようなことはありません。でも、あれを恨まれたのかもしれません」
「何だ、それは?」
「4日前です。指南番の山本小左衛門殿の道場で納会の試合がありました。そのとき私は小左衛門殿の代わりに審判をしました。ただし、目録以下の者の試合だけを見届けたんです。数馬の試合のときも、審判は私でした」
「数馬の相手は誰だったんだ?」
「御側役平田喜太夫殿の嫡男、多門という者です」
「その試合で数馬は負けたんだろう?」
「そうです。多門は小手を1本と面を2本取りました。数馬は1本も取れませんでした。つまり3本勝負でひどい負け方をしたんです。それで、審判の私に因縁があるのかもしれない」
「それで数馬はお前の審判が偏っていたと思うのか?」
「そうです。私は偏った審判はしていません。偏った審判をする理由もありません。でも、数馬は偏っていると思ったのかもしれません」
「普段はどうか? お前は何か数馬と口論したことはないか?」
「口論したことはありません。ただ………」

原文 (会話文抽出)

「三右衛門、数馬はそちに闇打ちをしかけたそうじゃな。すると何かそちに対し、意趣を含んで居ったものと見える。何に意趣を含んだのじゃ?」
「何に意趣を含みましたか、しかとしたことはわかりませぬ。」
「何もそちには覚えはないか?」
「覚えと申すほどのことはございませぬ。しかしあるいはああ云うことを怨まれたかと思うことはございまする。」
「何じゃ、それは?」
「四日ほど前のことでございまする。御指南番山本小左衛門殿の道場に納会の試合がございました。その節わたくしは小左衛門殿の代りに行司の役を勤めました。もっとも目録以下のものの勝負だけを見届けたのでございまする。数馬の試合を致した時にも、行司はやはりわたくしでございました。」
「数馬の相手は誰がなったな?」
「御側役平田喜太夫殿の総領、多門と申すものでございました。」
「その試合に数馬は負けたのじゃな?」
「さようでございまする。多門は小手を一本に面を二本とりました。数馬は一本もとらずにしまいました。つまり三本勝負の上には見苦しい負けかたを致したのでございまする。それゆえあるいは行司のわたくしに意趣を含んだかもわかりませぬ。」
「すると数馬はそちの行司に依怙があると思うたのじゃな?」
「さようでございまする。わたくしは依怙は致しませぬ。依怙を致す訣もございませぬ。しかし数馬は依怙のあるように疑ったかとも思いまする。」
「日頃はどうじゃ? そちは何か数馬を相手に口論でも致した覚えはないか?」
「口論などを致したことはございませぬ。ただ………」

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