岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 「徳の野郎、あいつは不思議な奴ですよ。なん…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』

現代語化

「徳って奴、変だったよな。貧乏そうだったのに、死んでから荷物調べたら、新品の綿入れが3枚、羽織が3枚、着物と羽織のセットが1組、帯が3本、印半纏が4枚、浴衣が5枚、あと現金が70円くらい出てきたんだ。そしたら、普段滅多に顔を出さないやつらが、姪だの従兄だのってどこからともなく集まってきて、全部持って行っちまったよ。世の中って薄情だなあ。徳がそういう連中と付き合わなかったのも頷けるわ。」
「お玉は病院に入ってから元気になって、すっかりデブになったよ。」
「病気の方は?」
「ダメみたい。もう治らないよ。まあ、あそこで死ぬしかないんだろうな。」
「でも、本人にとってはそっちの方が幸せかもしれないよ。」
「そうかもしれないな。」

原文 (会話文抽出)

「徳の野郎、あいつは不思議な奴ですよ。なんだか貧乏しているようでしたけれど、いよいよ死んでから其の葛籠をあらためると、小新しい双子の綿入れが三枚と羽織が三枚、銘仙の着物と羽織の揃ったのが一組、帯が三本、印半纏が四枚、ほかに浴衣が五枚と、それから現金が七十円ほどありましたよ。ところが、今までめったに寄り付いたことのねえ奴らが、やれ姪だの従弟だのと云って方々からあつまって来て、片っ端からみんな持って行ってしまいましたよ。世の中は薄情に出来てますね。なるほど徳の野郎が今の奴らと附き合わなかった筈ですよ。」
「お玉は病院へ行ってから、からだはますます丈夫になって、まるで大道臼のように肥ってしまいましたよ。」
「病気の方はどうなんです。」
「いけませんね。もうどうしても癒らないでしょうよ。まあ、あすこで一生を終るんですね。」
「だが、当人としたら其の方が仕合せかも知れませんよ。」
「そうかも知れませんね。」


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