岡本綺堂 『三浦老人昔話』 「きょうはばあやはいないんですか。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『三浦老人昔話』

現代語化

「今日はおばあちゃんいないんですか?」
「おばあちゃんは出かけてますよ。下町にいる私の娘が孫たちを連れてつつじを見に来るってこの間から言ってたんですけど、それが今日の日曜日にどやどや来たんで、おばあちゃんが案内して連れて行きました。近くにいながら知らないもんですね。私も全然知りませんでしたが、今年もつつじは盛況みたいですね。あなたも来る途中で見ましたか?」
「いえ。どこも寄ってません」
「真っ直ぐここへ?」
「まあ、まあ、そっちの方が賢明ですね。いくら人形が上手くできてたって、つつじで作った牛若弁慶の五条大橋なんて、あなたが見るもんじゃありませんよ。はははははは」
「でも、人が来てる時に押しかけてもいいんですか?」
「構いませんよ」
「遠慮することはないですよ。あいつらが1軒1軒口を開けて鑑賞してると半日はかかりますから、めったに帰ってくる心配はありませんよ。私1人置いてけぼりになって、退屈しのぎに土いじりしてたら、ちょうどあなたが来てくれたんで、ゆっくり話していってください」
「置いてけぼり」

原文 (会話文抽出)

「きょうはばあやはいないんですか。」
「ばあやは出ましたよ。下町にいるわたくしの娘が孫たちをつれて躑躅を見にくるとこのあいだから云っていたのですが、それが今日の日曜にどや/\押掛けて来たもんですから、ばあやが案内役で連れ出して行きましたよ。近所でいながら燈台下暗しで、わたくしは一向不案内ですが、今年も躑躅はなか/\繁昌するそうですね。あなたもこゝへ来がけに御覧になりましたか。」
「いゝえ。どこも覗きませんでした。」
「まっすぐにこゝへ。」
「まあ、まあ、その方がお利口でしょうね。いくら人形がよく出来たところで、躑躅でこしらえた牛若弁慶五条の橋なんぞは、あなた方の御覧になるものじゃありますまいよ。はゝゝゝゝゝ。」
「しかし、お客来のところへお邪魔をしましては。」
「なに、構うものですか。」
「決して御遠慮には及びません。あの連中が一軒一軒に口をあいて見物していた日にはどうしても半日仕事ですから、めったに帰ってくる気づかいはありませんよ。わたくし一人が置いてけ堀をくって、退屈しのぎに泥いじりをしているところへ、丁度あなたが来て下すったのですから、まあゆっくりと話して行ってください。」
「置いてけ堀」


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