GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『三浦老人昔話』
現代語化
「名前は知らねえけど、ある人が大阪の城番になった時に、屋敷に鎧がなかったんだって。たぶん売るか質屋に入れてしまったんだろうね。でも武家の仕事中に鎧櫃を持たせないわけにもいかねえから、空の鎧櫃に適当な石を入れて、重さをごまかして持たせたら、それが途中で転げ出して大騒ぎになったことがあるんだって。これも困っただろうな。ははははは」
「西鶴の『武道伝来記』とかを読むと、昔は仇討ちがやたらにあったようだけど、世の中が平和になるとだんだん減っていったよね。幕府も勝手に仇討ちすることを禁止するし、諸藩も表面上は仇討ちの願いを聞かなくなったから、自然とそういう話は聞かなくなった。でも実際には仇討ちってことがわかれば、相手を殺しても罪にならないから、武家だけでなく町人や百姓の間でもたまに仇討ちがあったんだ。芝居や講釈とかで仇討ちをめっちゃ褒めてるし、世間でも賞賛するから、やっぱり根絶にはならなくて、たまに変わった仇討ちもあったみたい。これもその1つなんだって。いや、これは赤坂に行って半七さんに聞いた方がいいかも。あの人の養父にあたる吉五郎って人も関わってる事件だから」
「いえ、赤坂も赤坂ですけど、あなたから直接聞くのが一番いいんですけど、どうでしょうか?」
「じゃ、話しましょう。別に大した事件じゃないんですけどね」
原文 (会話文抽出)
「今お話をした今宮さんのようなのが其昔にもあったそうですよ。」
「名は知りませんが、その人は大阪の城番に行くことになったところが、屋敷に鎧が無い。大方売ってしまったか、質にでも入れてしまったのでしょう。さりとて武家の御用道中に鎧櫃を持たせないというわけにも行かないので、空の鎧櫃に手頃の石を入れて、好加減の目方をつけて坦ぎ出させると、それが途中で転げ出して大騒ぎをしたことがあるそうです。これも困ったでしょうね。はゝゝゝゝゝ。」
「西鶴の武道伝来記などを読むと、昔はむやみに仇討があったようですが、太平がつゞくに連れて、それもだん/\に少くなったばかりでなく、幕府でも私にかたき討をすることを禁じる方針を取っていましたし、諸藩でも表向きには仇討の願いを聴きとどけないのが多くなりましたから、自然にその噂が遠ざかって来ました。それでも確かに仇討とわかれば、相手を殺しても罪にはならないのですから、武家ばかりでなく、町人、百姓のあいだにも仇討は時々にありました。なにしろ芝居や講釈ではかたき討を盛に奨励していますし、世間でも褒めそやすのですから、やっぱり根切りというわけには行かないで、とき/″\には変った仇討も出て来ました。これもその一つです。いや、これは赤坂へ行って半七さんにお聴きなすった方がいゝかも知れない。あの人の養父にあたる吉五郎という人もかゝり合った事件ですから。」
「いえ、赤坂も赤坂ですが、あなたが御承知のことだけは今こゝで聴かせて頂きたいもんですが、如何でしょう。」
「じゃあ、まあお話をしましょう。なに、別に勿体をつけるほどの大事件ではありませんがね。」