岡本綺堂 『中国怪奇小説集』 「わたくしはこの庄に足を留めてから二、三年…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『中国怪奇小説集』

現代語化

「実は俺、ここに住み始めた頃って盗みやってたんですよ」
「まじかよ、今でもやってるの?」
「もうやってません。だから正直に言ってるんです。大体、盗賊って墓荒らしやるじゃないですか。俺も墓荒らしたいなって思って、仲間大勢連れて、この近くの古墳を掘り返しに行ったんですよ。古墳はここらから10キロくらい西にあって、すげえ高くでかくて、絶対何かあるなって思ったんです。松林入って200メートルくらい行くと、古墳の前に出ました。草ボーボーで、デカい石碑が倒れてたんですけど、字が消えちゃって何て書いてあるかわかんねえんです。とにかく50メートルくらい掘ると、石の門が見えてきたんですけど、周りが鉄で固められててガチガチでした」
「どうやって開けたの?」
「人間のウンコを煮て、何日もかけてかけてたら、鉄が溶けたんです。それでやっと石門を開けたら、びっくりしました。中から矢が雨のように飛んできて、仲間が5、6人やられちゃいました。みんなビビって帰ろうとしたんですけど、俺はやめませんでした。他に仕掛けがあるわけじゃねえんだから、矢を全部撃ち尽くさせりゃ大丈夫だって思ったんです。こっちも負けじと石を投げ込みました。中と外で矢と石の戦いがしばらく続いたんですけど、結局相手の矢はなくなりました。それで松明つけて中に入ると、また2つめの門があって、それは簡単に開いたんですけど、門の奥には木の像が何十体も立ってて、一斉に剣を振ってきたからたまりませんでした。前の仲間が5、6人ここでまた斬られちゃいました。こっちは棒を持って必死で叩いて、相手の剣を全部落としたんです。あたりを見回すと、壁にも衛兵の絵が描かれてて、南の壁の前にデカい漆塗りの棺が鉄の鎖で吊されてました。棺の下には金銀財宝が山のように積んであったんです。でも、前の失敗があったから、誰も近寄れねえで、顔見合わせてると、急に棺の角から風が吹き出して、砂がガンガン飛んできました。あっという間に風が砂もどんどんひどくなって、目も開けられねえし、砂が膝まで積もってきて、みんなビビって我先に逃げ出したんですけど、遅れた1人が砂に埋もれちゃいました。外に出ると、門が勝手に閉まってて、もう入れなくなってました。入れたとしても、もう二度と行く気になれねえので、みんなすぐに帰りました。それからは俺たち、墓荒らしはやめようと誓ったんですよ。あの時のこと思い出すと、今でも怖くて震えます」

原文 (会話文抽出)

「わたくしはこの庄に足を留めてから二、三年になりますが、実はひそかに盗賊を働いていたのでございます」
「いや、飛んでもない男だ。今も相変らずそんな悪事を働いているのか」
「もう唯今は決して致しません。それだから正直に申し上げたのでございます。御承知の通り、大抵の盗賊は墓あらしをやります。わたくしもその墓荒しを思い立って、大勢の徒党を連れて、さきごろこの近所の古塚をあばきに出かけました。塚はこの庄から十里(六丁一里)ほどの西に在って、非常に高く、大きく築かれているのを見ると、よほど由緒のあるものに相違ありません。松林をはいって二百歩ほども進んでゆくと、その塚の前に出ました。生い茂った草のなかに大きい碑が倒れていましたが、その碑はもう磨滅していて、なんと彫ってあるのか判りませんでした。ともかくも五、六十丈ほども深く掘って行くと、一つの石門がありまして、その周囲は鉄汁をもって厳重に鋳固めてありました」
「それをどうして開いた」
「人間の糞汁を熱く沸かして、幾日も根よく沃ぎかけていると、自然に鉄が溶けるのです。そうして、ようようのことで、その石門をあけると驚きました。内からは雨のように箭を射出して来て、たちまち五、六人を射倒されたので、みな恐れて引っ返そうとしましたが、わたくしは肯きませんでした。ほかに機関があるわけではないから、あらん限りの箭を射尽くさせてしまえば大丈夫だというので、こちらからも負けずに石を投げ込みました。内と外とで箭と石との戦いが暫く続いているうちに果たして敵の矢種は尽きてしまいました。 それから松明をつけて進み入ると、行く手に又もや第二の門があって、それは訳なく明きましたが、門の内には木で作った人が何十人も控えていて、それが一度に剣をふるったから堪まりません。さきに立っていた五、六人はここで又斬り倒されました。こちらでも棒をもってむやみに叩き立てて、その剣をみな撃ち落した上で、あたりを見まわすと、四方の壁にも衛兵の像が描いてあって、南の壁の前に大きい漆塗りの棺が鉄の鎖にかかっていました。棺の下には金銀や宝玉のたぐいが山のように積んである。さあ見付けたぞとは言ったが、前に懲りているので、迂闊に近寄る者もなく、たがいに顔をみあわせていると、俄かに棺の両角から颯々という風が吹き出して、沙を激しく吹きつけて来ました。あっと言ううちに、風も沙もますます激しくなって、眼口を明けていられないどころか、地に積む沙が膝を埋めるほどに深くなって来たので、みな恐れて我れ勝ちに逃げ出しましたが、逃げおくれた一人は又もや沙のなかへ生け埋めにされました。 外へ逃げ出して見かえると、門は自然に閉じて、再びはいることは出来なくなっています。たといはいることが出来ても、とても二度と行く気にはなれないので、誰も彼も早々に引き揚げて来ました。その以来、わたくしどもは誓って墓荒しをしないことに決めました。あの時のことを考えると、今でも怖ろしくてなりません」


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