岡本綺堂 『半七捕物帳』 「その煙草屋の甥というのは、本所の金魚屋の…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「その煙草屋の甥というのは、本所の金魚屋の親戚で、元吉って奴じゃないか?」
「そうです。そうです。元吉っていうんです。親分はもう調べたんですか?」
「道具屋の惣八から聞いた。その惣八から惣八が先生に頼まれて、どこかに金魚を売り込んだことがあるらしい」
「分かりました。それでその元吉が先生を殺したんでしょう?」
「お前はそう思うのか?」
「だって親分」
「そいつが売り込んだ金魚は当然偽物に違いない。それで儲けようとしたけど、上手くいかなくて正体がバレて、先生からは厳しく交渉された。結局は売った金を返さなきゃいけなくなったけど、もうその金は使ってしまって一文もねえ。仕方なく腹を立てて…。そうじゃないのか?で、お葉って女は、その元吉と前から付き合ってて、男の手引きをして主人を殺させたんでしょう」
「おうむ」
「そうすると、そのお葉はどうして死んだ。元吉が殺したのか?」
「まあ、そうでしょうね。手引きをさせて先生を殺したものの、この女を生かしておくと証拠が残ると思って、何か油断させておいて、不意に池に突き落としたんでしょう。違いますか?」
「なるほど、筋道は通ってるな。じゃあ、お前はそのつもりで元吉の方を調べてくれ」
「すぐに引きずり出してやりますか?」
「バカ言うな」
「一人で将棋を指すみたいに、自分で勝手に決めつけるなよ。確かな証拠もないのにむやみにそんなことをしたら、殿に叱られるぞ。落ち着いて仕事しろ。庄太はどうした?あいつにも手伝わせろ」
「はい。了解しました」

原文 (会話文抽出)

「その煙草屋の甥というのは、本所の金魚屋の親類で、元吉という奴じゃあねえか」
「そうです。そうです。元吉というんです。親分はもう聞き込みましたかえ」
「道具屋の惣八から聴いた。そいつから惣八にたのんで、惣八から宗匠にたのんで、どこへか金魚を売り込んだことがあるそうだ」
「わかりやした。するとその元吉が宗匠を殺ったんでしょう」
「おめえはそう思うか」
「だって親分」
「そいつの売り込んだ金魚は勿論いか物に相違ありません。それで一杯食わせようとしたところが、やり損じて化けの皮があらわれて、宗匠からはむずかしく談じ付けられる。所詮は売った金を返さなければならねえ羽目になったが、もう其の金は使ってしまって一文もねえ。苦しまぎれに悪気をおこして……。ねえ、そこらでしょう。ところで、お葉という女は、その元吉と前々から出来合っているので、男の手引きをして主人を殺させたのでしょう」
「むむ」
「そうすると、そのお葉はどうして死んだ。元吉が殺したのか」
「まあ、そうでしょうね。手引きをさせて宗匠を殺したものの、この女を生かして置くと露顕の基だと思って、なにか油断させて置いて、不意に池のなかへ突き落したのでしょう。違いますかえ」
「なるほどうまく筋道は立つな。じゃあ、おめえはその積りで元吉の方をしらべてくれ」
「すぐに引き挙げてようがすかえ」
「馬鹿をいえ」
「ひとりで将棋をさすように、自分でばかり決めてかかってもいけねえ。確かな証拠も無しにむやみにそんなことをすると、旦那方に叱られるぞ。まあおちついて仕事をしろ。庄太はどうした。あいつにも片棒かつがせろ」
「あい。ようがす」


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