岡本綺堂 『半七捕物帳』 「その其蝶とお葉とおかしいようなことはある…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「その其蝶とお葉がおかしいようなことはないだろうな?」
「さあ」
「そんなことは知りません。其蝶は師匠の家によく出入りはしてますが、まさかそんなことはないでしょう。風流のことばかりを考えてる偏屈な人ですから」
「あの先生は生活に困ってないのか?」
「そこそこ名前も売れてて、句を頼みに来る人も多いみたいだから、困ることはないでしょう。いい弟子や、いい取引先もいますし、内職でもそれなりに収入があるようです」
「内職って何をやってんだ?掛け軸や短冊の売り込みか?」
「まあ、そんな感じです」
「俺達も時々持ち込んでるけど、そこそこのものでさえ大抵どこかで売ってくれる」
「お前さん、最近何か持ち込んだか?」
「はい」
「隠すなよ。正直に言え。本当に何か持ち込んだのか?」
「芭蕉と其角の短冊を持って行きました」
「それだけか?それで、それはどうなった?」
「どうにもいい物じゃないってことになって、取り合ってもらえませんでした」
「おい、惣八。お前はなぜ隠す。短冊とか色紙の他に、あの先生のところへ何か持ち込んだものがあるだろう?正直に言わないと帰さないぞ」
「はい」
「はいじゃねえ。はっきり言え。下手に唾を飲み込むと、いつまでも帰さないぞ」
「実は私もそれにまつわることで少々迷惑していることがあって…。それで今朝も先生のところへ出向いたんですが、あの件で…。いや、どうも驚いているんです」

原文 (会話文抽出)

「その其蝶とお葉とおかしいようなことはあるめえな」
「さあ」
「そんなことは知りません。其蝶は師匠の家へ足を近く出入りはしていますが、まさかにそんなことはないでしょう。風流一方に凝りかたまっている偏人ですからね」
「あの宗匠は都合がいいかえ」
「相当に名前も売れていて、点をたのみに来るものも随分あるようですから、困るようなことはありますまい。いい弟子や、いい出入り先もありますから、内職のほうでも又相当の収入があるようです」
「内職とはなんだえ。掛物や短冊の売り込みかえ」
「まあ、そうです」
「わたくし共もときどきに持ち込みますが、筋のいい物でさえあれば大抵どこへか縁付けてくれます」
「おまえさん、この頃に何か持ち込んだかえ」
「へえ」
「隠しちゃあいけねえ。正直に云ってくれ。ほんとうに何か持ち込んだのかよ」
「芭蕉と其角の短冊を持って行きました」
「それだけかえ。そうして、それはどうした」
「どうも筋がよくないというので、取り合ってくれませんでした」
「おい、惣八。おめえはなぜ隠す。短冊や色紙のほかに、あの宗匠のところへ何か持ち込んだものがあるだろう。正直に云わねえじゃあいけねえ」
「へえ」
「へえじゃあねえ。はっきり云いねえ。下手に唾を呑み込んでいると、いつまでも帰さねえよ」
「実はわたくしもそれに就いて少々迷惑していることがありますので……。それで今朝も宗匠のところへ出かけますと、あの一件で……。いや、どうも驚いているのでございます」


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