GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「お金は一文もいらないし、決して無心はしないと言っていたものの、お歌は欲深いんじゃなくて、色情で…。お歌はどうしてか俊乗に惚れてたんです」
「お歌は松蔵とも関係があったんでしょうね?」
「本人はただの知り合いだと言ってますけど、あっちもこっちもろくでもない人間同士のことですから、どういう関係なのか分かりません」
「松蔵は今もうちに出入りしてるんですか?」
「はい、時々来ます」
「月に一度と言う約束だったのに、お歌は何回も来ましたよね?」
「俊乗が堕落するのは目に見えてましたが、私にはそれを止めることができませんでした。お歌も流石に昼間は来ないので、近所の目には付きませんでしたが、最後には俊乗をどこかへ連れ出すようになりました。かわいそうなのは俊乗で、縛られ地蔵のことも自分の発案じゃなくて、いわば師匠の私を救うために、こんな苦労をしてるんです。ある時、本人が私の前に平伏して、涙を流して自分の堕落を告白した時には、私も思わず泣いてしまいました。お歌のような悪魔にまとわりつかれて、それを振り払えなかったのは、俊乗の罪じゃなくて、師匠である私の罪なんです。その罪の恐ろしさを知りながらも、どんどん罪を重ねてしまったのが、地蔵を踊らせたことです。松蔵が何度も無心してきたので、俊乗も断ったんです。地蔵尊の参 INVESTIGATION REQUEST
原文 (会話文抽出)
「それがやはり思惑のあることで……」
「金は一文も要らない、決して無心がましいことは云わないと申して居りましたが、お歌は慾心でなく、色情で……。お歌はどうしてか俊乗に恋慕して居ったのでござります」
「お歌は松蔵とも係り合いがあったのでしょうね」
「さあ、本人は唯の知り合いだと申して居りましたが、あんな人間同士のことですから、どういう因縁になっているか判りません」
「松蔵は相変らず出入りをしているのですか」
「はい、時々に参ります」
「月に一度という約束でありながら、お歌は二度も三度もまいりました」
「俊乗がやがて堕落することは眼にみえて居りましたが、わたくしにはそれを遮ぎる力がありません。お歌もさすがに昼間はまいりませんので、幸いに近所の眼には立ちませんでしたが、仕舞いには俊乗をどこへか連れ出すようになりました。可哀そうなのは俊乗で、縛られ地蔵のことも本人の発意では無し、いわば師匠のわたくしを救うが為に、こんな難儀をして居るのでござります。ある時、本人がわたくしの前に手をついて、涙を流して自分の堕落を白状いたしました時には、わたくしも思わず泣かされました。お歌のような悪魔に付きまとわれて、それを振り払うことの出来なかったのは、俊乗の罪ではなく、師匠のわたくしの罪でござります。 その罪の恐ろしさを知りながら、いやが上にも罪をかさねましたのは、地蔵の踊りでござります。松蔵が執念深く、無心にまいりますので、俊乗も断わりました。地蔵尊の参詣人もこの頃はだんだんに遠ざかって、賽銭その他も昔とは大きな相違であるから、毎々の無心は肯かれないと申し聞かせますと、それならばいい工夫がある……と云うのが地蔵の踊りで、コロリ除けと云い触らせば、きっと繁昌すると云うのでござります。忌だと云えば、縛られ地蔵の秘密をあばくと云う。俊乗も気が弱く、わたくしも気が弱く、どうで地獄へ堕ちる以上、毒食わば皿と云ったような、出家にあるまじき度胸を据えて……。いや、よんどころなく度胸を据えることになりまして……」