岡本綺堂 『半七捕物帳』 「どなたもお役目御苦労に存じます。思いもよ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「お役人様、ご苦労様です。突然の不幸な出来事と、寺中の者どもの不手際で、なんとも申し訳ございません」
「このお寺には何人の方がいらっしゃるんですか?」
「私以外に俊乗がいますが、まだ若いので役僧として仕事をさせています」
「あとは納所の了哲と小坊主の智心、寺男の源右衛門の合わせて5人です」
「寺男の源右衛門というのは、おいくつでどこ生まれですか?」
「源右衛門は25歳で、秩父の大宮在の生まれです」
「若いんですね」
「源右衛門は門前の花屋、定吉の甥で、叔父を頼って江戸に出てきたのですが、その頃ちょうど寺男が足りなくて、定吉の紹介で一昨年から働いていました」
「その源右衛門は問題なく働いていましたか?」
「それが…」
「10日前から戻ってこないんです」
「駆け落ちしたんですか?」
「お分かりの通り、12、13日は大雨で、14日は境内の掃除に追われていました。花屋の定吉や納所の了哲も手伝って、朝から掃除をしていたんですが、その日の夕方にちょっと外出してくると言って出て行ったきり、戻ってきません。叔父の定吉も心配して、心当たりを探していますが、まだ居場所が分かりません…。本人所持の物は全部残っていて、着替えも1枚も持ち出した様子がなく、駆け落ちとも思えないし、駆け落ちする理由もないので、みんな不思議がっています」
「御門前の地蔵様が踊ったって本当ですか?」
「踊ったかどうかは分かりませんが、地蔵尊が動いたのは本当です。私も自分の目で拝みました」
「それを拝むとコレラ除けのおまじないになると言われていましたよね?」
「いや、それは世間の人が勝手におっしゃっているだけで、仏の御心は分かりません。果たしてコレラ除けのおまじないになるかどうか、私たちにも分かりません」

原文 (会話文抽出)

「どなたもお役目御苦労に存じます。思いもよらぬ椿事出来、その上に寺中の者共の不調法、なんとも申し訳がござりません」
「こちらのお寺はお幾人でございます」
「わたしのほかに俊乗、まだ若年でござりますが、これに役僧を勤めさせて居ります」
「ほかは納所の了哲と小坊主の智心、寺男の源右衛門、あわせて五人でござります」
「寺男の源右衛門というのは幾つで、どこの生まれですか」
「源右衛門は二十五歳、秩父の大宮在の生まれでござります」
「これも若いのですね」
「源右衛門は門内の花屋定吉の甥で、叔父をたよって出府いたした者でござりますが、そのころ丁度寺男に不自由して居りましたので、定吉の口入れで一昨年から勤めさせて居りました」
「その源右衛門は無事に勤めて居りますか」
「それが……」
「十日以前から戻りませんので……」
「駈け落ちをしたのですか」
「御承知の通り、十二、十三の両日は強い風雨で、十四日は境内の掃除がなかなか忙がしゅうござりました。花屋の定吉、納所の了哲も手伝いまして、朝から掃除にかかって居りましたが、その日の夕方、ちょっとそこまで行って来ると云って出ましたままで、再び姿を見せません。叔父の定吉も心配して、心あたりを探して居りますが、いまだに在所が知れないそうで……。本人所持の品々はみな残って居りまして、着がえ一枚持ち出した様子もないのを見ますと、駈け落ちとも思われず、また駈け落ちをするような仔細も無し、いずれも不思議がって居るのでござります」
「御門前の地蔵さまが踊ったと云うのは、ほんとうでございますか」
「踊ったと云うのかどうか知りませんが、地蔵尊の動いたのは本当で、わたくしも眼のあたりに拝みました」
「それを拝めばコロリよけのお呪いになると云うことでしたね」
「いや、それは世間の人が勝手に云い触らしたことで、仏の御心はわかりません。果たしてコロリ除けのお呪いになるかどうか、わたくし共にも判りません」


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