岡本綺堂 『半七捕物帳』 「高源寺の一件はおめえも薄々聞いているだろ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「高源寺の一件は知ってるだろ?寺から頼まれたんだ。ちょっと協力してくれ」
「女が殺されたって本当ですか?」
「ああ。寺の奴らが甘かったんだよ。地蔵が踊るなんてアホくさすぎる。さっさと中止させりゃよかったんだ」
「私は見てないけど、手下のが亀吉は面白がって見に行ったそうなんで、あいつと相談してどうにかしますよ」
「お前は地蔵の踊りを見たんだな」
「見ましたよ」
「世の中どうしてこんなに目が悪い奴が多いのか、マジで呆れるね。地蔵が踊ってるんじゃない、踊らせてるんだよ」
「そうでしょうね」
「あの寺はな、林泉寺に対抗して縛られ地蔵を流行らせたけど、長くは続かなかった。そこで今度は地蔵を踊らせて、それを拝んだ者はコレラに感染しないとかデタラメなことを言いふらして、つまりはお賽銭儲けの山師商売やってたんだ。寺でやってることだから、町方が簡単に介入できないから、俺も指をくわえて見てたけど、いずれなにか問題起きるだろうと思ってたら、案の定こんなことになった。こうなったら遠慮は要らない、山師坊主を全員引っ張り出して自白させちまおうか」
「そんなに簡単にはいかないですよ」
「まあ手順を踏んで、こっちでも調べられることは調べておかないとね。相手が強情張ると面倒なことになる。で、その地蔵は14日から踊らなくなったんだって…。お前はその理由を知ってるか?」
「コレラが収まってきたのと、寺から何か不吉なことを言われそうでイヤになってきたんで、そろそろ潮時だと諦めて、踊らせないことにしたんでしょう」
「そうかな」
「それにしても、殺された女が高源寺と関係あるかどうかはまだハッキリしてない。地蔵を踊らせたのは坊主どもの仕業にしても、女の死体を誰が運んできたのか分からない。寺の坊主が殺したんなら、わざわざ目立つように地蔵に縛り付けておくわけねえと思うけど…」
「山師坊主ども、それをネタになにか言いふらすつもりじゃねえのか?」
「可能性はあるし、ないとも言い切れない。ともかく念のため、小石川まで行ってみよう。現場を見てからの判断だ」

原文 (会話文抽出)

「高源寺の一件はおめえも薄々聞いているだろうが、寺社の頼みだ。一つ働いてくれ」
「女が殺されたそうですね」
「うむ。寺社がそもそも手ぬるいからよ。地蔵が踊るなんてばかばかしい。早く差し止めてしまえばいいのだ」
「わたしは見ませんが、子分の亀吉は話の種に、地蔵の踊るのを見に行ったそうですから、あいつと相談して何とか致しましょう」
「その地蔵の踊りをおめえは見たのだな」
「見ましたよ」
「世間にゃあどうして盲が多いのかと、わっしも実に呆れましたね。地蔵が踊るのじゃあねえ、踊らせるのですよ」
「そうだろうな」
「あの寺はね、林泉寺の向うを張って、縛られ地蔵を流行らせたが、長いことは続かねえ。そこで今度はその地蔵を踊らせて、それを拝んだ者はコロリに執り着かれねえなんて、いい加減なことを云い触らして、つまりはお賽銭かせぎの山仕事ですよ。なにしろ寺でやる仕事で、町方が迂闊に立ち入るわけにも行かねえから、わっしも指をくわえて見物していましたが、今に何事か出来するだろうと内々睨んでいると、案の通り、こんな事になりました。こうなったら遠慮はねえ、山師坊主を片っぱしから引き挙げて泥を吐かせましょうか」
「そう手っ取り早くも行かねえ」
「まあひと通りは順序を踏んで、こっちでも調べるだけの事は調べて置かなけりゃあならねえ。相手に悪強情を張られると面倒だ。そこで、その地蔵が十四日から踊らなくなったと云う……。おめえは其の訳を知っているか」
「コロリもだんだん下火になったのと、寺社の方から何だか忌なことを云われそうにもなって来たので、ここらがもう見切り時だと諦めて、踊らせないことにしたのでしょう」
「そうかな」
「それにしても、殺された女が高源寺に係り合いがあるかどうだか、そこはまだ確かに判らねえ。地蔵を踊らせたのは坊主どもの機関にしても、女の死体は誰が運んで来たのか判らねえ。寺の坊主が殺したのなら、わざわざ人の眼に付くように、地蔵に縛り付けて置く筈はあるめえと思うが……」
「山師坊主め、それを種にして又なにか云い触らすつもりじゃあありませんかね」
「そんな事がねえとも云えず、あるとも云えねえ。ともかくも念のために、小石川へ踏み出してみよう。現場を見届けてからの分別だ」


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