岡本綺堂 『半七捕物帳』 「不思議ですね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「マジで不思議だよね」
「マジ不思議。みんなも不思議がって、夜10時くらいまで待ってたみたいだけど、地蔵は冷めた顔して微動だにしなかったから、とうとう諦めてみんな帰っちゃった。8月14日で、その日は月もキレイだったのに。次の日は月見だから参拝する人も少ないし、それから16、17、18、19の4日間も地蔵は全然踊らなさすぎて、みんなガッカリしてたみたい。涼しくなってコレラも落ち着いてきたから、地蔵も踊らなくなったんだろうとか噂してたけど、ともかく地蔵は踊らないってことで、参拝する人もパタッと来なくなったんだって。そしたら、また別の事件が起きたんだよね」
「どんな事件が…。やっぱり高源寺で?」
「そうだよ」
「8月24日の朝、小石川御箪笥町に屋敷がある今井善吉郎って小旗本の家来の武助が、何かの用で午後5時頃にこの高源寺の前を通ったんだって。何気なく地蔵堂の方を見ると、薄暗い中に人影が見える。近づいてよく見たら、女の人が縛られてたんだ。荒縄でガチガチに縛られてるんだよ」
「縛られ地蔵に女が縛られてんの…。ヤベーな」
「やばすぎる。女は死んでるみたいで、武助もびっくりしたらしい。でも急いでたから、それに関わってる暇はなかったんだって。たまたま近くで酒屋の戸が開いたので、そこで若い衆に教えて自分はその場を立ち去ったんだって。そしたら大騒ぎになって、近所の人が駆けつけたら、女は19か20歳くらいの色白でキレイな娘だったんだけど、田舎娘みたいな格好してて、髪の毛はばさばさだった。お前の言う通り、縛られ地蔵に女が縛られてて死んでたんだから、ただの変死体以上に騒ぎになっても仕方ないよね」

原文 (会話文抽出)

「不思議ですね」
「不思議です。みんなも不思議だと云いながら、四ツ(午後十時)頃までは待っていたのですが、地蔵さまは冷たい顔をしてびくとも身動きもしないので、とうとう根負けがしてぞろぞろと引き揚げました。八月十四日で、今夜はいい月でした。明くる晩は月見ですから、参詣人も少ない。それから、十六、十七、十八、十九の四日間、地蔵さまはちっとも踊らないので、みんな的がはずれました。 陽気も涼しくなって、コロリもおいおい下火になったので、地蔵さまも踊らなくなったのだと云い触らす者もありましたが、ともかくも地蔵さまはもう踊らないという噂が立ったので、参詣人もぱったりと絶えてしまいました。すると、ここに又ひとつの事件が出来しました」
「どんな事件が……。やはり高源寺に起こったんですか」
「そうですよ」
「八月二十四日の朝、小石川御箪笥町に屋敷を持っている、今井善吉郎という小旗本の中間武助が何かの用で七ツ半(午後五時)頃に、この高源寺門前を通りながら、何心なく地蔵堂をのぞくと、薄暗いなかに人らしい姿が見える。近寄ってよく見ると、ひとりの女が縛られている。女は荒縄で厳重に縛られているのです」
「縛られ地蔵に女が縛られている……。面白いですね」
「面白いどころじゃない。女はもう死んでいるらしいので、武助もおどろきました。しかし自分は先きを急ぐので、そんな事にかかり合ってはいられない。丁度に表の戸を明けかかった近所の酒屋の若い者にそれを教えて、自分はそこを立ち去りました。さあ大騒ぎになって、近所の人達が駈けあつまると、女は十九か二十歳ぐらい、色白の小綺麗な娘ですが、見るからに野暮な田舎娘のこしらえで、引っ詰めに結った銀杏返しがむごたらしく頽れかかっていました。まったくあなたの云う通り、縛られ地蔵に女が縛られていて、しかもそれが死んでいると云うのですから、普通の変死以上にみんなが騒ぎ立てるのも無理はありませんでした」


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