岡本綺堂 『半七捕物帳』 「いらっしゃい」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「いらっしゃい」
「やつ来たか?」
「上がってください。毎日寒くて」
「こちらへどうぞ。今日は女が休みなので、2階が散らかっていて」
「女は休みなのか?」
「お吉が病気かな?」
「さあ、まだ何も言ってませんが、流行感冒でも引いたんでしょう」
「あいつが連れのやつか?」
「親分、どうしましょう?」
「いきなり捕まえるわけにもいくまい。まあ、上がってきたら、お前がうまく連れの武士のことを聞いてみろ。その返事次第で考えるさ。相手は武士だ。無闇に振り回すと危ねえから、その刀はどこかに隠しておけ」
「わかりました。誰かを呼んで手伝ってもらいましょうか?」
「いや、それには及ぶまい。相手は1人だ。何とかなるだろう」
「いや、馬鹿なことを言わないでくださいよ」
「今考えると実にばかばかしい話で、それからその武士が上がってくるのを待って、熊蔵がそれとなくいろいろのことを聞くと、どうもその返事があいまいで、なにか隠してるみたいだったんです。私も横から出ていろいろと聞いてみましたが、どうも納得いかないところが多いんです。こっちも焦れてきて、とうとう十手を出しましたよ。いや、大しくじりで……。はははは。なんでも焦っちゃいけませんね。そうすると、その武士も切羽詰まったと見えて、ようやく本音を吐いたんですが、やっぱりお吉の言った通り、その2人の武士は仇討ちでしたよ」
「仇討ち……」
「まったく仇討ちなんですよ。それがまたおかしい。まあ聞いてください」

原文 (会話文抽出)

「いらっしゃい」
「野郎。来たかな」
「おあがり下さいまし。毎日お寒いことでございます」
「どうぞこちらへ。けさは女が休んだものですから、二階も散らかって居ります」
「女は休んだか」
「お吉は病気かな」
「さあ、まだ何とも云ってまいりませんが、流行感冒でも引いたんでございましょう」
「あれが連れの奴か」
「親分、どうしましょう」
「まさか、いきなりにふん縛るわけにも行くめえ。まあ、ここへ上がって来たら、てめえがなんとか巧く云って連れの武士のことを訊いてみろ。その返事次第でまた工夫もあるだろう。なにしろ相手が武士だ。無暗に振りまわされるとあぶねえから、その大小はどこへか隠してしまえ」
「そうですね。誰か加勢に呼びましょうか」
「それにも及ぶめえ。多寡が一人だ。何とかなるだろう」
「いや、馬鹿なお話ですね」
「今考えると実にばかばかしい話で、それからその武士のあがって来るのを待っていて、熊蔵がそれとなくいろいろのことを訊くと、どうもその返事が曖昧で、なにか物を隠しているらしく見えるんです。わたくしも傍から口を出してだんだん探ってみたんですが、どうも腑に落ちないことが多いんです。こっちももう焦れて来たので、とうとう十手を出しましたよ。いや、大しくじりで……。はははは。なんでも焦っちゃいけませんね。そうすると、その武士も切羽詰まったとみえて、ようよう本音を吐いたんですが、やっぱりお吉の云った通り、その二人の武士は仇討でしたよ」
「かたき討……」
「まったく仇討なんですよ。それが又おかしい。まあお聴きなさい」


青空文庫現代語化 Home リスト