GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「会社員とかじゃないの?お吉に気でもあるんでしょ」
「いやあ、おかしいでしょう。聞いてくださいよ。去年の冬からもう50日も毎日続いて来るんです。大晦日も、元旦も、2日も……。いくら会社員だって、大晦日と元旦に銭湯の2階で寝てるわけねえでしょう。しかも、1人じゃないんです。たいてい2人で来て、時々どっかに行ったり戻ったりして、夕方になると必ず一緒に帰って行く。しつこいほど毎日来るし、大晦日も正月も関係なしだから変でしょう。どう考えても普通のサラリーマンじゃありませんよ」
「そうだなあ」
「親分、この2人って何をされてると思います?」
「偽者かな?」
「さすが!」
「俺もそう睨んでるんです。あいつら武士のフリして何か怪しい仕事してるに違いないんですよ。それで昼間はうちの2階に集まって、何かコソコソ相談して、夜になって悪いことしてるんじゃないかと思います」
「そんな可能性もあるな。あいつらどんな奴らだ?」
「2人とも若い奴で……。1人は22、3歳くらいで色白できれいな顔立ちの男です。もう1人も同じくらいの歳で、こっちの方が背が高くて、これも悪くない顔をしています。相当遊び慣れてるみたいで、お湯代もケチケチしてなくて、女とイワシやクジラの話をしてるような田舎者でもありません。実はお吉なんて、色白の方にちょっと気があるみたいで……。あきれますよ。だからあいつらが2階でどんな相談してるのかお吉に聞いても、どうもちゃんと教えてくれないんです。それでさっきこっそり階段の中間まで上がって、あいつらがどんな話してるのか耳を澄ませたら、1人が小声で『むやみに斬ったりするなよ。素直に言うことを聞けばいいんだ。グズグズ言ったらしょうがない、脅して捕まえろ』って言ってるんです。どうですか?これだけ聞いても怪しい相談だってわかりますよね」
「なるほど」
原文 (会話文抽出)
「けれども、毎日欠かさずに来るんですぜ」
「勤番者だろう。お吉に思召しでもあるんだろう」
「だって、おかしいじゃありませんか。まあ聴いておくんなせえ。去年の冬からかれこれもう五十日も毎日つづけて来るんですぜ。大晦日でも、元日でも、二日でも……。なんぼ勤番者だって、屋敷者が元日二日に湯屋の二階にころがっている。そんな理窟がねえじゃありませんか。おまけに、それが一人でねえ、大抵二人連れでやって来て、時々どこかへ出たり這入ったりして、夕方になるときっと一緒に繋がって帰って行く。それが諄くもいう通り、暮も正月もお構いなしに、毎日続くんだから奇妙でしょう。どう考えてもこりゃあ尋常の武士じゃありませんぜ」
「そうよなあ」
「どうです。親分はそいつ等をなんだと思います」
「偽者かな」
「えらい」
「わっしもきっとそれだと睨んでいるんです。奴らは武士の振りをして何か仕事をしているに相違ねえんです。で、昼間は私の家の二階にあつまって、何かこそこそ相談をして置いて、夜になって暴っぽいことをしやがるに相違ねえと思うんだが、どうでしょう」
「そんなことかも知れねえ。その二人はどんな奴らだ」
「どっちも若けえ奴で……。一人の野郎は二十二三で色の小白い、まんざらでもねえ男っ振りです。もう一人もおなじ年頃の、片方よりは背の高い、これもあんまり安っぽくねえ野郎です。相当に道楽もした奴らだとみえて、茶代の置きっ振りも悪く無し、女を相手に鰯や鯨の話をしているほどの国者でも無し、実はお吉なんぞはその色の小白い方に少しぽうと来ているらしいんで……。呆れるじゃありませんか。それですから奴らが二階でどんな相談をしているか、お吉に訊いてもどうも正直に云わねえようです。私がきょうそっと階子の中途まで昇って行って、奴らがどんな話をしているかと、耳を引っ立てていると、一人の奴が小さい声で、『無暗に斬ったりしてはいけない。素直に云うことを肯けばよし、ぐずぐず云ったら仕方がない、嚇かして取っ捉まえるのだ』と、こう云っているんです。ねえ、どうです。これだけ聞いても碌な相談でないことは判ろうじゃありませんか」
「むむ」