岡本綺堂 『半七捕物帳』 「成程、幾次郎という奴には、そういう因縁が…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「なるほど、幾次郎という奴には、そういう事情があるのか」
「ところで、その幾次郎は相変わらずお店に勤めているのか?」
「今日もお客さん対応していました」
「近所の噂だけで、確かではないんだけど、和泉屋の女房が節句の晩あたりから家にいないらしいんです。もちろん和泉屋では内緒にしていますが、お店の小僧が使事に出たとき、誰かに話したそうで……」
「和泉屋の女房もいないのか?」
「節句の晩といえば府中の闇祭りの晩だ。その同じ晩に、伊豆屋の女房は府中で姿を消し、和泉屋の女房は江戸で姿を消す。いくら両方が知り合い同士だとしても、まさか女同士が誘い合わせて駆け落ちしたわけでもあるまい。変な話だな」
「ああ、降る、降る」
「どうだ。何か面白い発見があったか?」
「むむ、まず一通りは分かった」
「第一の聞き込みは、和泉屋の女房も闇祭りの晩に姿を消したということだ」
「ふむう」
「それは面白い。それで親分。善八と違って、私のほうにはいい発見はありません。伊豆屋については大体あの番頭の言った通りですが、近所で聞くと、伊豆屋の主人はお人好しの方で、お八重という女房が内外のことを一人で切り盛りしている、いわゆる嚊天下の家だそうで、もう年頃の息子や娘がいるにもかかわらず、お八重は派手な衣装で神社参拝にもたびたび出かけるという評判です」
「別に浮気をしているような噂はないのか?」
「そんな女だから何か不義を働いていないかと思って、私もいろいろ探ってみましたが、そんな噂もありません。よっぽど上手くやっているんでしょうか」
「和泉屋の手代の幾次郎とおかしいという噂は聞かないか?」
「聞きませんね。よそでそんな噂があるんですか?」
「そうでもないけど、まあ聞いてみたんだ」

原文 (会話文抽出)

「成程、幾次郎という奴には、そういう因縁があるのか」
「そこで、その幾次郎は相変らず店に働いているのか」
「きょうも店に坐っていました」
「近所の噂だけで、確かなことは判らねえのですが、和泉屋の女房は節句の晩あたりから家にいねえらしいと云うのです。もちろん和泉屋じゃあ内証にしていますが、店の小僧が使に出たとき、誰かにしゃべったそうで……」
「和泉屋の女房もいねえのか」
「節句の晩といえば府中の闇祭りの晩だ。その同じ晩に、伊豆屋の女房は府中で姿をかくし、和泉屋の女房は江戸で姿を隠す。いかに両方が知合いの仲だと云っても、まさかに女同士が誘い合わせて駈け落ちをしたわけでもあるめえ。妙な事になったものだな」
「ああ、降る、降る」
「どうだ。何かおもしれえ掘出し物があったか」
「むむ、まず一と通りは判った」
「第一の聞き込みは、和泉屋の女房も闇祭りの晩に姿をかくしたと云うことだ」
「ふむう」
「そりゃあおもしれえ。そこで親分。善ぱと違って、わっしの方にゃいい見付け物もありません。伊豆屋のことは大抵あの番頭の云った通りですが、近所で訊くと、伊豆屋の主人はお人好しの方で、お八重という女房が内外のことを一人で切って廻している、いわば嚊天下の家だそうで、もう年頃の息子や娘がありながら、お八重は派手なこしらえで神詣りにもたびたび出て歩くという評判です」
「別に浮気をしているような噂もねえのか」
「そんな女だから何か不埒を働いていやあしねえかと思って、わっしもいろいろ探ってみましたが、そんな噂もねえようです。よっぽど上手にやっているんでしょうか」
「和泉屋の手代の幾次郎とおかしいと云う噂は聞かねえか」
「聞きませんね。よそでそんな噂があるんですか」
「そうでもねえが、まあ訊いてみたのだ」


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