岡本かの子 『河明り』 「ともかく、私が日本を出発するときの気慨は…

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青空文庫図書カード: 岡本かの子 『河明り』

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「とにかく、私が日本を出発するときの気持ちはすごかったですよ。白い洋傘に、『大鵬の志よ、図南の翼よ』って書いて、振り回したりなんかして……今考えると恥ずかしいですね」
「人の人生って、自分でも自分が分からないものです。私の当時の夢は、南洋の孤島で理想の詩の世界を作るってことだったんです……でも現実を知ると、まずはその知識と準備が必要になり、次は自分はもう無理だから、同じような考えの人に自分の知識を与えようとなり、それが職業化すると、ただの事務作業になっちゃうんです」
「普通の人にはこんな愚痴は言わないんですけど、理解してくれそうな内地の若者を見ると、つい話したくなるんです。あなた方の年齢じゃまだ分からないでしょうけど、人はいくつになっても中学生の心は残ってるんです」
「私は今でも、雑誌の詩壇の選考委員を頑張ってます。投稿も減るし、新しい人に代えろって編集長にいつも言われますけど、これだけは死ぬまで人に譲りません」

原文 (会話文抽出)

「ともかく、私が日本を出発するときの気慨は大変なものでしたよ。白金巾の洋傘に、見よ大鵬の志を、図南の翼を、などと書きましてね。それを振り翳したりなんかしましてね……今から思えば恥かしいようなもので、は、は、は、……」
「人間の行き道というものは、自分で自分のことが判らんものですな。僕のその時分の初志は、どこか南洋の孤島を見付けて、理想的な詩の国を建設しようとしたにあったのですが……だんだん現実に触れて見ると、まずその智識や準備をということになり、次には自分はもう出来ないから、それに似たような考えの人に、折角貯えた自分の智識を与えようということになり、それが、職業化すると、単なる事務に化してしまいます」
「普通の人にならこんな愚痴は云わないで、ただ磊落に笑っているだけですが、判って下さりそうな内地の若い方を見ると、つい喋りたくなるのです。あなた方のお年頃じゃ判りますまいが、人間は幾つになっても中学生のところは遺っています」
「僕は、今でも、僕の雑誌の詩壇の選者を頑張ってやっています。だんだん投書も少くなるし、内地の現代向の人に代えろと始終、編輯主任に攻撃されもしますが、なに、これだけは死ぬまで人にはやらせない積りです」

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