岡本かの子 『河明り』 「河岸の事務室を開けて、貸室に致しましたの…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本かの子 『河明り』

現代語化

「河岸の事務所を開けて貸室にしたのも苦肉の策で、実は、この娘を結婚させようとしてる店員がいて、でもその男のことがよく分からないんです。それでいろいろ迷った結果、世間が広い人に相談に乗っていただいて、いろんな人と交流してみて、娘の結婚相手を再検討しようと思って……」
「私たちの世界は、商取引相手や組合の仲間ばかりで、広そうに見えて狭いんです。それにこの娘が急に学者になりたいと言い出して、洋服を着て歩き回ったりして、ますます変な子になってしまって、婿の候補も満足な人がいませんで……」
「もういいですよ、話はまた今度で……」
「いや、そうじゃないんです。私は明日からまた寝込んでしまって、いつお会いできるか分からないので……」

原文 (会話文抽出)

「河岸の事務室を開けて、貸室に致しましたのも窮余の策で、実は、この娘に結婚させようという若い店員がございますのですが、どうも、その男の気心がよく見定まりません。いろいろ迷った揚句、どなたか世間の広い男の方にでも入って頂いて、そういう方々ともお付合いしてみて、改めて娘の身の振り方を考え直してみましょう。まあ、打ち撒ければ、こういった考えがござりましたのです」
「なにせ、私どもの暮しの範囲と申したら、諸国の商売取引の相手か、この界隈の組合仲間で、筋が定まり切っているだけ、広いようで案外狭いのでございます。それにこの娘が一時どういう気か学者になるなぞと申して、洋服なぞ着て、ぱふらぱふらやったものですから、いよいよ妙なことになって、婿の口も思うほどのことはございませんでして……」
「もう、よろしいじゃございませんか、お話しは、また、この次に……」
「いや、そうじゃございません。手前は明日が明日からまた寝込んでしまって、いつこの次にお目にかかれるか判りません。それで……」


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