海野十三 『蠅男』 「おい帆村君。僕はまた君のおかげで命拾いを…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』

現代語化

「っす、帆村。また助けてもらったっぺ。ありがとな」
「帆村はん。私もありがとね」
「爆弾は助かったけど、問題はな。蠅男がこんなもんどっから手に入れたかってことだ。市販品じゃねーよな。俺、蠅男は前からこーゆーもん用意してたと思うんだ」
「そーだべ。孤立した殺人魔だし、ギャングじゃねーと思う」
「正木さん」
「蠅男は鴨下邸に出入りしてるんじゃないか。爆弾はそーゆー場所に隠してあるんだろ」
「無ーりじゃね。警戒厳重だっつってんだろ。そんじゃカオルさんと山治くんも無事じゃねーか。蠅男が入ってきたら誰かしら気づくよ」
「でも、この爆弾見たら、蠅男は鴨下邸の秘密倉庫に出入りしてるってしか考えられねーよ」
「秘密倉庫? あんのかよ」
「俺の想像だけど。しかも、この小包を見ても思った。蠅男は遠くには行ってねーってこと」
「なんで?」
「消印見てみ。郵便局じゃない、手書きの偽物だ。この小包持ってきた配達員って、蠅男の変装じゃねーの。監視厳重なのにここに出没するってことは、近くに潜伏してるってことでしょ」
「ってことは、小包持って署に来た奴が蠅男か。やべーな。追跡せなきゃ」
「もう遅いっす。今頃、蠅男はどっかのビルに逃げ込んで、窓からこっち見てニヤニヤしてるっしょ」
「そっか。残念だな」

原文 (会話文抽出)

「おい帆村君。僕はまた君のおかげで命拾いをした。お礼をいう」
「帆村はん。私もお礼をいわしとくんなはれ」
「爆弾の危難は助かりましたから、それはいいとして、ここで考えてみなければならぬのは、蠅男がどうしてこんな精巧な爆弾を手に入れたかということです。こんなものは、どこでも作れるというものではありません。僕の考えでは、蠅男はかねてこんな爆弾を用意してあったのだと思います」
「そうだ。そのとおりだろう。蠅男は孤立した殺人魔だ。ギャング組織ではないと思う」
「それなら正木さん」
「僕は蠅男が依然として、鴨下ドクトル邸に出入しているのじゃないかと思いますよ。爆弾は、あの邸内のどこかに隠してあるのでしょう」
「そんなこと不可能だすな」
「警戒は屋内屋外にあって厳重にしとるのでっせ。そして邸には、ドクトルの遺児カオルはんと許婚の山治はんが、無事に暮しとりますんや。もし蠅男が入りこんだのやったら、どこかで誰かが見つける筈だすがな」
「いや、この爆弾を見ては、僕はどうしても蠅男が、ドクトル邸の秘密倉庫なんかに出入しているとしか考えられんです」
「秘密倉庫? そんなものが、どこかに拵えてありますのか」
「もちろん僕の想像なんです。なお僕は、この小包を見て考えました。蠅男は、あまり遠くへいっていないということです」
「それはまた、なんです」
「小包の消印を見ましたか。あれは郵便局で押したものではなく、手製の胡魔化しものですよ。だからあの小包を持って来た郵便局の配達夫というのは、恐らく蠅男の変装だったにちがいありません。蠅男に対する監視は厳重なんですから、蠅男がここへ出てくるようでは、その辺に潜伏しているのに違いありません」
「そんなら、この小包を持って本署に来た配達夫が蠅男やったんか。そら、えらいこっちゃ。追跡させんならん」
「署長さん、もう遅いですよ。いまごろ蠅男は、どっかその辺の屋上に逃げついて、そこからこっちの窓を見てニヤッと笑っているでしょう」
「そうか、残念やなア」


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