海野十三 『蠅男』 「オイ帆村君。なにか面白い話でも聞かさんか…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』

現代語化

「おい帆村。何か面白い話でも聞かせてくれないか。俺は退屈してるんだ」
「面白い話はこちらこそ伺いたいんです。ハエ男がアメリカのギャングみたいに機関銃を脇に抱えてダーダー撃った時の様子はどうでした」

「うん、なかなか凄かったらしいよ。味方はたちまち蜘蛛の子を散らすように逃げ出して、電柱の影や共同便所の裏に隠れてしまったんだって」
「検事さんの口にかかると、こっちもみんな脱帽だね」
「それよりも帆村はん、すごい話があるんや。それはハエ男の機関銃のことなんやけど、その機関銃の銃身がこっちからは全然見えへんねん」
「え、もう一度言ってもらえますか」
「つまり、ハエ男は機関銃を撃ってるはずなのに、その肝心の銃身がどこにも見えへんねん」
「それはおかしいですね。ハエ男はどういう風に構えていたんですか」
「ただこういう風に」
「左腕を前に伸ばして立ってるだけやったらしい。手には何も持ってないねん。透明機関銃やないかって言う人もいるで」
「透明機関銃?まさかそんなものがあるわけないでしょう。何か見間違えじゃないんですか」
「いや、ハエ男に向かった誰もが、言い合わせたみたいにそう言ってたんやで……」
「ふーん」
「そうそう、そういえばさっきのハエ男の電話では、ハエ男は今夜のうちにまた誰かを殺すって言ってたよ」
「なんだって、今夜のうちに、また殺すって」
「ほんまかいな――」
「誰かハエ男から脅迫状を受け取った人はいないんですか」
「誰だろう、今度は誰だろう?」
「さあ、ハエ男から死の脅迫状を受け取ったって訴えはどこからも来てないよ」
「ふーん、変だな」
「なんだ。誰が殺されるか、まだ分かってないんですか」

原文 (会話文抽出)

「オイ帆村君。なにか面白い話でも聞かさんか。儂は至極退屈しているんだ」
「面白い話は、こっちから伺いたいくらいですよ。蠅男がアメリカのギャングのように機関銃を小脇にかかえてダダダッとやったときの光景はいかがでした」
「ウン、なかなか勇壮なものだったそうだ。味方はたちまち蜘蛛の子を散らすように四散して、電柱のかげや共同便所のうしろを利用してしまったというわけさ」
「検事さんのお口にかかっては、こっちは皆シャッポや」
「それよりも帆村はん、豪い妙な話がおますのや。それは蠅男の機関銃のことだすがナ、その機関銃の銃身がこっちには皆目見えへなんだちゅうのだす」
「え、もう一度いって下さい」
「つまり、蠅男は機関銃を鳴らしとるのに違いないのに、その肝腎の銃身がどこにも見えしまへんねん」
「それはおかしな話ですね。蠅男はどんな風に構えていたんですか」
「ただこういう風に」
「左腕を前につきだして立っとるだけやったいう話だす。手にはなんにも持っとらしまへんねん。透明機関銃やないかという者も居りまっせ」
「透明機関銃? まさか、そんなのがあろう筈がない。何か見ちがえではないのですか」
「いや、蠅男に向うた誰もが、云いあわしたようにそういいよったんで……」
「フーム」
「そうそう、そういえば先刻の蠅男の電話では、蠅男は今夜のうちにまた誰かを殺すといっていましたよ」
「なに今夜のうちに、また殺すって」
「ほんまかいな――」
「誰か蠅男から脅迫状をうけとった者はないのですか」
「誰だろう、こんどの犠牲は?」
「さあ、蠅男から死の脅迫状をうけとったいう訴えはどこからも来てえしまへんぜ」
「フーム、変だな」
「なんだ。誰が殺されるか、まだ分っていないのですか」


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