GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』
現代語化
「探偵の帆村荘六だな。こっちはハエ男だ」
「え、電話がちょっと遠いのでよく聞こえませんが、ハヤイトコどうするんですか」
「ハヤイトコじゃない、ハエ男だ!」
「え、早床さんですか?床屋さんですね」
「ああそうですか、ハエ男だとおっしゃるのですね。あの今大阪市中で大人気の怪人物のハエ男ですか。ちょっと伺いますが、本当のハエ男さんですか。まさかハエ男の人気を羨んで、ハエ男を装ってるわけじゃないですよね」
「おい帆村。お前は美しい令嬢糸子と、俺の手紙と、確かに受け取っただろうな」
「はい、どちらも確かに」
「じゃあ約束通りだ。お前はこの事件から手を引け。俺を探偵したり、俺と張り合おうと思っても無駄だからやめろ。糸子は美しい。そしてお前が約束を守れば、俺は決して糸子には手をかけない。わかったな」
「おっしゃることはよくわかりました、ハエ男さん。でもあなたは人殺しの罪を犯したんですよ。早く自首してください。自首すれば、私は安心できます」
「自首?ハハハハ。誰があんなものするか。――とにかく下手に動くと、必ず後悔するぞ」
「あなたも気をつけなさい。警察では、どうしてもあなたを捕まえて絞首台に送るんだと言っていますよ」
「俺を捕まえる?へえ、ばかにするな。ハエ男は絶対に捕まらない。俺は警察の連中に一泡吹かせてやるつもりだ。そして俺を捕まえるのを諦めさせるんだ」
「ほう、一泡吹かせるんですって。それじゃあなたはまだ人を殺すつもりなんですね」
「そうだ、見てろ。今夜また素晴らしい殺人事件が起きて、警察の奴らは腰を抜かすんだ。誰が殺されるか、それがお前がわかれば、お前もついに手を引く気になるだろう」
「一体これから殺されるのは誰なんです」
「ばか!そんなことは殺される人間だけが知ってりゃいいんだ」
「え。――」
「そうだ。帆村に一言言いたいという女がいるんだ。電話を代わるからちょっと待て」
「な、なんですって。女から用があると言うんですか――」
「ねえ、帆村さん」
「あなたは誰ですか。名前を教えてください」
「名前なんてどうでもいいわ。朝から私たちをつけてたりして。早く宝塚から……」
「――し、失敗った。おいお竜、警官の車が来たぞ!」
「え、――」
原文 (会話文抽出)
「ハイハイ、お待ちどうさま。僕は帆村ですが、貴方はどなたさんですか」
「探偵の帆村荘六君だネ。こっちは蠅男だ」
「えッ、電話がすこし遠いのでよく聞えませんが、ハヤイトコどうするんですか」
「ハヤイトコではない、蠅男だッ」
「えッ、早床さんですか。すると散髪屋ですね」
「ああそうですか、蠅男だとおっしゃるんですな、あの今大阪市中に大人気の怪人物の蠅男でいらっしゃるわけですか。ちょっと伺いますが、本当の蠅男さんですか。まさか蠅男の人気を羨んで、蠅男を装っているてえわけじゃありますまいネ」
「オイ帆村君。君は美しい令嬢糸子さんと、俺の手紙とをたしかに受取ったろうネ」
「ええどっちとも、確かに」
「ではあのとおりだぞ。貴様はすぐにこの事件から手を引くんだ。俺を探偵したり、俺と張り合おうと思っても駄目だからよせ。糸子さんは美しい。そして貴様が約束を守れば、俺はけっして糸子さんに手をかけない。いいか分ったろうな」
「仰有ることはよく分りましたよ、蠅男さん。しかし貴下は人殺しの罪を犯したんですよ。早く自首をなさい。自首をなされば、僕は安心をしますがネ」
「自首? ハッハッハッ。誰が自首なんかするものか。――とにかく下手に手を出すと、きっと後悔しなければならないぞ」
「貴方も注意なさい。警察では、どうしても貴方をつかまえて絞首台へ送るんだといっていますよ」
「俺をつかまえる? ヘン、莫迦にするな。蠅男は絶対につかまらん。俺は警察の奴輩に一泡ふかせてやるつもりだ。そして俺をつかまえることを断念させてやるんだ」
「ほう、一泡ふかせるんですって。すると貴方はまだ人を殺すつもりなんですね」
「そうだ、見ていろ、今夜また素晴らしい殺人事件が起って、警察の者どもは腰をぬかすんだ。誰が殺されるか。それが貴様に分れば、いよいよ本当に手を引く気になるだろう」
「一体これから殺されるのは誰なんです」
「莫迦! そんなことは殺される人間だけが知ってりゃいいんだ」
「ええッ。――」
「そうだ、帆村君に一言いいたいという女がいるんだ。電話を代るからちょっと待っとれ」
「な、なんですって。女の方から用があるというんですか――」
「ねえ、帆村さん」
「貴女は誰です。名前をいって下さい」
「名前なんか、どうでもいいわ。けさからあたしたちをつけたりしてさ。早く宝塚から……」
「――し、失敗ったッ。オイお竜、警官の自動車だッ」
「えッ、――」