GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』
現代語化
「そのことなら、さっきやっと謎が解けたんです。ハエ男はホテルの中にいるってバレないように、電話にもトリックを使ったんです」
「へえ、どんなトリックを――」
「それはホテルの交換台からすぐに帳場をつながないで、いったん部屋から外線につないでもらい、電話局からもう一度別の電話番号でこのホテルにかけて、一度交換台を経由して帳場につながせてもらったんです。そうすれば、同じホテル内の部屋にかけたとしても、電話局まで大回りしてきたから、電話の声がホテル内同士でかけるよりずっと小さくなったんです。すごいトリックですよ」
「なるほどなあ」
「でも、なんでそんな面倒なことしたんだろうな。糸子さんの胸の上に脅迫状をのせとけばいいのに」
「いや、それってつまり、今ホテルにハエ男が入ってるって知られたくなかったんです。あくまで自分は井上 一夫で、ハエ男じゃないっていうアリバイを作っておきたかったんです」
「なるほどなるほど。それにしてもハエ男ほどの悪党のくせに、ちっちゃいことをビクビクしてるんだよなあ」
「そこですよ」
「ハエ男はまたこのホテルに戻ってくるつもりなんです。普通の宿泊客みたいにね」
「え、ハエ男がまたここに戻ってくるっていうの?それじゃ、こりゃあ――こりゃあ大変なことだ。どうしたらいいんだ」
「ああ、今帳場に電話が来てますよ。井上 一夫さんて人からだそうです」
原文 (会話文抽出)
「そら妙やなア。あの電話が蠅男やったとすると、蠅男はホテルの外にいたことになりまっせ。なんでやいうたら、あの電話はホテルのなかから懸けたんやあれしまへんさかい。電話を懸けた蠅男と、この部屋に居った蠅男と、蠅男が二人も居るのんやろか」
「そのことなら、さっきやっとのことで謎を解いたんです。蠅男はホテルのなかに居るのを知られないために、電話にも奇略をつかったんです」
「へえ、どんな奇略を――」
「それはホテルの交換台からすぐに帳場をつながないで、一旦部屋から外線につないで貰い、電話局から再び別の電話番号でこのホテルに懸け、一度交換台を経て帳場につないで貰ったんですなア。そうすれば、同じホテル内の部屋にかけたにしろ、電話局まで大廻りして来たから、電話の声がホテル内同士でかけるよりはずっと小さくなったんです。実に巧みな奇略だ」
「なるほどなア」
「しかし、なんでそんなややこしい事をしましたんやろ。糸子さんの胸の上にでも、その脅迫状をのせといたらええのになア」
「いやそれはつまり、今ホテルに蠅男が入っていることを知られたくはなかったんです。あくまで自分は井上一夫で、蠅男ではないという現場不在証明を作って置きたかったんです」
「なるほどなるほど。それにしても蠅男ほどの大悪漢のくせに、小さいことをビクビクしてまんな」
「いやそこですよ」
「蠅男は今にもう一度このホテルに帰ってくるつもりなんですよ。普通の泊り客らしい顔をしてネ」
「えッ、蠅男がもう一度ここへ帰ってくるというのでっか。さあ、そいつは――そいつは豪いこっちゃ。どないしまほ」
「ああ、いま帳場に電話が来とりまっせ。井上一夫はんいうお客さんからだす」