海野十三 『蠅男』 「モシモシお客さん。何か間違いでも起りまし…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』

現代語化

「もしもし、お客さん。何か間違いがありましたか?」
「うん。――」
「そうです。さっき帳場でもらった西洋封筒の手紙ですが、あれは誰が持って来たんですか?」
「ああ、あの手紙ね。あれは――」
「さあ、教えてくださいよ。誰があの手紙を持って来たんですか?」
「――そのことなんですけど、お客さん。ちょっと変なところがあるんです。実は、あの手紙は私が拾って来たんですよ」
「手紙を拾って来たって?」
「はい、それがおかしいんですよ。詳しく説明しても分からないと思いますが、確か午後4時頃だったと思うんですけど、帳場の方に電話がかかって来たんです。出てみると男の声で、今玄関を出ると庭に西洋封筒を投げるから、それを拾って帆村さんに渡しておいてくれ――って、そう言ったんです。それで電話はすぐ切れてしまったんですけど、変だなあと思いながらも玄関の外に出たんです。するとどうでしょう、電話の通りに砂利の上にあの西洋封筒が落ちてるんですよ。ハハア、これは本当なんだと思って、それで拾って、お客さんにお届けしたっていうわけです」

原文 (会話文抽出)

「モシモシお客さん。何か間違いでも起りましたやろか」
「うむ。――」
「そうだ。さっき帳場で貰った西洋封筒に入った手紙のことだが、あれは誰が持ってきたのかネ」
「あああの手紙だっか。あれは――」
「さあ、それを云ってくれたまえ。誰があの手紙を持ってきたのだ」
「――そのことだすがな、お客さん。ちょっと妙なところがおまんね。実はナ、あの手紙は私が拾いに出ましてん」
「手紙を拾いに出たとは?」
「いえーな、それがつまり妙やなアとは思ってましたんですわ。詳しくお話せにゃ分ってもらえまへんが、あれは午後四時ごろやったと思いますが、この帳場へ電話が懸って来ましてん。懸ってみますと男の声でナ、いま玄関を出ると庭に西洋封筒を抛りこんであるさかい、それを拾って帆村さんに渡しといて呉れ――と、こないに云うてだんネ。そして電話はすぐ切れました。なにを阿呆らしいと思うたんやけど、まあまあそんにして玄関の外に出ましたんや。するとどうだす、電話のとおりに、砂利の上にあの西洋封筒が落ちていますやないか。ハハア、こらやっぱり本当やと思って、それで拾って、お客さんにお届けしたというような次第だす」


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