海野十三 『蠅男』 「ウフ、名探偵帆村荘六さえ、そう思っていて…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅男』

現代語化

「ウフ、名探偵帆村荘六さえ、そう思ってくれてると知ったら、蠅男は後から灘の生一本なんかを送ってくるだろうよ」
「灘の生一本? 僕は甘党なんですけどね」
「ホイそうだったな。それじゃ話にならない。――分かるかい、旅行中の看板を出したのは、訪問客を屋敷の中に入れない作戦なんだよ。屋敷の中を見てごらん。そこにドクトルの死体があって、火炙りにされそうになってるんだね。それじゃ犯人の都合が悪いでしょ。アメリカでは、よくこんな手を使う犯罪者がいるんだ」
「じゃあ、ドクトルはもうこの世に姿を見せないとおっしゃるんですね」
「それは姿を見せることもあるかもしれないよ。君、幽霊ってやつはね、今でも――」
「じゃあ検事さん。ドクトルを殺したのは誰ですか」
「決まってるじゃないか。蠅男が『殺すぞ』って予告状を置いていった」
「じゃあ、あの機関銃を撃った奴は何者ですか」
「うん、どうも奴の素性がよく分からないんで、憂鬱なんだ。奴が蠅男であってくれれば、ことは簡単に解決するんだけど」
「さすがの検事さんも、驚きましたね。あの機関銃の射手と蠅男は別物ですよ。蠅男が機関銃を持っていれば、パラパラと相手の胸を蜂の巣みたいに撃ち抜いて逃げるよ。何にも痴情のもつれなんて関係ないでしょ、死体を裸にして、ストーブの中に逆さ吊りにして燃やすなんて手間のかかることをするわけないでしょ」
「おやおや、君は、あの犯人を痴情のもつれだとでも言うのかい。するとドクトルの愛人か何かが殺したということかい。そうすると、話は俄然面白くなるが、まさか君も、流行りの『お定』宗じいさんじゃないだろうね」
「でも検事さん。あのドクトル邸は、ドクトル一人しかいなかったとおっしゃっていますが、事件の前後に、若い女性があの屋敷の中にいたって御存知ですか?」
「なんだって?若い女性がいた――若い女性がいたって言うのかい。それは君、本当なのか。――」

原文 (会話文抽出)

「ウフ、名探偵帆村荘六さえ、そう思っていてくれると知ったら、蠅男は後から灘の生一本かなんかを贈ってくるだろうよ」
「灘の生一本? 僕は甘党なんですがねえ」
「ホイそうだったネ。それじゃ話にもならない。――いいかね、旅行中の看板を出したのは、訪問客を邸内に入れない計略なのだ。邸内に入られて御覧。そこにドクトルの屍体があって、火炙りになろうとしていらあネ。それでは犯人のために都合が悪かろうじゃないか。アメリカでは、よくこんな手を用いる犯罪者がある」
「じゃ、ドクトルはもうこの世に姿を現わさないと仰有るのですね」
「それは現わすことがあるかも知れない。君、幽霊というやつはネ、今でも――」
「じゃ検事さん。ドクトルを殺したのは誰です」
「きまっているじゃないか。蠅男が『殺すぞ』と説明書を置いていった」
「じゃあ、あの機関銃を射った奴は何者です」
「うん、どうも彼奴の素性がよく解せないんで、憂鬱なんだ。彼奴が蠅男であってくれれば、ことは簡単にきまるんだが」
「さすがの検事さんも、悲鳴をあげましたね。あの機関銃の射手と蠅男とは別ものですよ。蠅男が機関銃を持っていれば、パラパラと相手の胸もとを蜂の巣のようにして抛って逃げます。なにも痴情の果ではあるまいし、屍体を素裸にして、ストーブの中に逆さ釣りにして燃やすなんて手数のかかることをするものですか」
「オヤ、君は、あの犯人を痴情の果だというのかい。するとドクトルの情婦かなんかが殺ったと云うんだネ。そうなると、話は俄然おもしろいが、まさか君も、流行のお定宗でもあるまいネ」
「だが検事さん。あのドクトル邸は、ドクトル一人しかいなかったと仰有っていますが、事件前後に、若い女があの邸内にいたことを御存じですか」
「ナニ若い女が居た――若い女が居たというのかネ。それは君、本当か。――」


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