海野十三 『地中魔』 「正金銀行の金庫の底に、爆弾が仕掛けてあっ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『地中魔』

現代語化

「正金銀行の金庫の底に、爆弾が仕掛けられてたんだ。……それで手首が飛んだんだ」
「俺も年甲斐もなく、大事な手首を吹っ飛ばされちまった。くやしいッ」
「どうだ、これ怪しいと思わねえか。あの金庫のことは、ネジ1本だって詳しく調べてあったんだ。なのに急に……」
「そういえば親分」
「昨日のラジオで、エンプレス号は午前中に金貨もろとも沈没しちゃって、すぐ潜水夫を呼んで捜索したけど、100万ドルの金貨は跡形もなくなってたってさ。でも親分の話じゃ、昨日夜に正金銀行まで行って、100万ドルを奪ってきたって言うよね。これじゃ話が合わない。どっちが本当なんだよ」
「それがさ」
「俺の計画じゃ、正金に金貨を運ぶはずだったんだ。そしたらラジオで、金貨が海底に沈んだって放送して、その後のニュースで、金貨が海底からなくなったって言う。こうなると俺が動き出す前に、カラスに油揚げを持ってかれたようなもんだ――もう悔しくて泣きたくなってたんだ。そしたらあれが警察のデマ、嘘八百だったんだ。正金銀行に移したことは極秘にしてたんだ。そう放送すれば岩も諦めるだろうって。……俺もあと少しで100万ドルを逃すところだった。警察にしては、やり方が上手すぎる。そこで俺も気付くべきだったんだ」
「どう気付くべきだったんですか?」
「爆弾で手首が飛んで、痛いッって叫んだ瞬間、俺に分かったんだ。俺の恐ろしい敵が、日本に帰ってきてるってことに――」

原文 (会話文抽出)

「正金銀行の金庫の底に、爆弾が仕掛けてあったのだ。……そいつに手首を吹き飛ばされたのさ」
「俺ともあろうものが、かけがえのない手首をもがれるなんて。無念だッ」
「どうだ、これを怪しいとは思わねえか。あの金庫のことは、ネジ釘一本だって調をつけてあったんだ。それにむざむざと……」
「そういえば親分」
「昨日のラジオじゃ、エンプレス号は午前中に金貨と諸共、海底に沈んだそうで、それが間もなく潜水夫を入れて探したところ、もう百万弗の金貨が影も形もなくなっていたという。しかし親分の話では、昨夜遅く、正金銀行まで出掛けて、百万弗を奪ってきたという。これじゃ話が合わない。一体どっちが本当なんです」
「それだ」
「俺は正金へ金貨を搬ばせる計画だった。ところがラジオでは、海底に金貨が沈んだと放送し、それから二度目のニュースでは、金貨が海底で見えなくなったという。これでは俺が手を出さない先に、鳶に油揚をさらわれた形だ――と、もう少しで口惜涙で帰るところだった。 ところがあれが警察のデマ、でたらめなんだ。正金銀行へ移したことは極力秘密さ。そう放送すれば岩は諦めるだろうと思ったのだ。……俺はも少しでマンマと百万弗を握り損うところだった。 警察にしちゃ、鮮かすぎる手だ。そこで俺は気がつくべきだった」
「どう気がつくべきだったんです」
「爆弾に手首を吹き飛ばされ、痛いッと叫んだ瞬間に、俺は気がついたのだ。恐るべき俺の敵が、日本に帰ってきているということを――」


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