海野十三 『地中魔』 「大辻さんは何だかその靴型を壊しそうで、横…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『地中魔』

現代語化

「大辻さん、その靴型壊しちゃいそうで見てられねえよ」
「なーに大丈夫だ。ほら見て、この柔らかい土に3つの足跡が付いてる。これを1個ずつ調べてみよう」
「これはどうだ」
「これは合わないな。真鍋博士の足跡だけど、博士は岩じゃない」
「プッ」
「博士は岩じゃないんだよ」
「でも安心はできねえよ。じゃあ次の足跡。これは小さい足跡だ。合わないはずだ。これも大丈夫」
「それは誰の足跡なのよ」
「それはお前さんの足跡じゃ」
「俺の足跡? ありえねえだろ大辻さん」
「もう1個、これが3つ目の足跡。おやおや、これは大きすぎて合わない。これも岩じゃなさそうだ」
「その足跡は誰の?」
「これは俺の足跡だ」
「なんだって?」
「つまり俺が、岩じゃないってことだ。どうだ、ちゃんと理屈が通ってるだろ」
「なーんだ。当たり前じゃん」
「もう見えるはずだな」
「課長」
「あそこに、変なの煙が上がってる。火事じゃないの?」
「なに煙? おお、あれか」
「はてな、おい、通信員。横浜警察に無線で連絡とって、聞いてみろ」
「こちら警視庁の特別警察隊です。あちらに煙が上がってますが、何の煙でしょうか」
「今確認中のようですが――」
「いや、今確認が入りました。やばいです。大変です」
「大変って?」
「港に停泊中のあのエンプレス号が突然火災を起こしました。原因不明ですが、どんどん燃えてます。急いであの100万ドルの金貨を降ろさないと」
「さあ急げ、全速力で!」
「もっと出せ。もっと出すってば」
「もうこれ以上は出ません。壊れます」
「壊れてもいいから、やれッ。岩にまた出し抜かれるよりはましだッ」

原文 (会話文抽出)

「大辻さんは何だかその靴型を壊しそうで、横から見ていてハラハラするよ」
「なーに大丈夫。ほらごらん、ここに三つの足跡が、この軟らかい土の上についている。これを一つ調べておこう」
「これはどうだ」
「これは合わないぞ。これは真鍋博士の足跡だが、博士は岩ではない」
「ぷッ」
「博士は岩じゃないよ」
「ところがそうとも安心していられないよ。さて第二の足跡。これは小さい足跡だ。これでは合うはずがない。これも大丈夫」
「それは誰の足跡だい」
「これはお前の足跡じゃ」
「僕の足跡? まあ呆れた大辻さんだね」
「もう一つ、これが第三の足跡。おやおや、これは大きすぎて合わない。これも岩ではなさそうだ」
「その足跡は誰の?」
「これはわしの足跡さ」
「なんだって」
「つまりわしは、岩じゃないということさ。どうだ、ちゃんと理窟に合っているじゃろう」
「なーんだ。あたり前じゃないか」
「もう見えそうなものだが」
「課長」
「あすこに、変な煙が立ち昇っています。火事じゃないでしょうか」
「なに煙? おお、あれか」
「はてな、おい、通信員。横浜警察をラジオで呼び出して、尋ねてみろ」
「おお、こっちは警視庁の特別警察隊。お尋ねしますが、海の方角に、煙が立っていますが、あれは何です」
「さあ、まだ報告が来ていませんが――」
「ああ、ちょっと待って下さい。今報告が入りました。あッ大変です。たいへんたいへん」
「たいへんとは?」
「港内に碇泊している例のエンプレス号が突然火を出したのです。原因不明ですが、火の手はますます熾んです。この上は、あの百万弗の金貨をおろさにゃなりますまい」
「さあ急げ、全速力だ!」
「もっと速力を出せ。出せといったら出さんかッ」
「もうこれで一杯です。これ以上出すと、壊れます」
「壊れてもいいから、やれッ。岩に、また一杯喰わされるよりはましだッ」


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