海野十三 『地中魔』 「おッ。呼んでいるな。さては敵か味方か。と…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『地中魔』

現代語化

「おー。呼ばれてるな。敵か味方か知らねーけど。とにかく寒くてたまんねーから上陸、上陸……」
「その格好なんだよ?」
「な、なんだ。三吉か」
「潜水服で潜ってたのかよ?」
「うんにゃ」
「お前が言ったとおり月島の海岸に立って海面を見てたんだ。そしたらでっかい男が寄ってきて、『もしものときには、これで探した方がいいだろうから貸してあげるよ』って貸してくれたんだよ」
「でっかい男? それでどうしたんだ」
「俺はお礼を言ったんだけど、着方が分かんねーんだ。ついでに教えてくれって頼んだら、『今先生を連れてくるから、これを持って待っててくれ』って言って向こうに行ったよ。もう来る頃だぜ」
「何で笑うんよ。これが役に立つかどうか知らないんだな?」
「だってその潜水服、最初から濡れてたんだろ?」
「そうだよ」
「じゃダメだよ。その服は海中で使ってたばかりなんだ。でっかい男ってんだから、岩に違いない。ほーら見てみろ、赤字で岩って書いてあるだろ。俺たち、バカにされてんだよ」
「岩」
「岩の奴、汽艇の中で見つからなかったんだろ。それは、追いつかれる前にこの潜水服を着て海に飛び込んだからだ。この潜水服には酸素ボンベが付いてるから、自分で海底を歩けるんだ。どんどん歩いて月島の海岸に近づいて大辻さんの隙をついて、海面から海坊主みたいに頭を出して、さっさと服を脱いで大辻さんに渡して、自分は逃げちまったんだ」
「そうなのかよ。先生を連れてくるとか言ってたけど」
「先生も生徒も来るわけねーだろ。それより足跡でも探してみようぜ」
「やあ、やったぜ」
「どうだ三吉。俺はふざけてるように見えても手柄を立てるぜ。名探偵ってのはこうじゃなきゃダメだ。この靴型も俺の手柄だから、俺が持ってることにするよ」

原文 (会話文抽出)

「おッ。呼んでいるな。さては敵か味方か。とにかく寒くてやり切れないから上陸、上陸……」
「その恰好はどうしたの?」
「なアんだ。三吉か」
「潜水服でもぐっていたのかい?」
「うんにゃ」
「お前が命じたとおり月島の海岸に立って海面を見張っていたよ。すると傍へ大きな男が寄って来てね、『まさかのときには、こいつで探したがいいでしょうから、貸してあげます』とこいつを貸してくれたのだよ」
「大きい男? そしてどうしたの」
「俺は有難うと礼をいったが、どうして着るのか分らない。ついでに教えてくれと頼むと、『今先生をよこすから、これを抱えてちょっと待っていて下さい』といって向うへ行ったよ。もう来るはずだ」
「何を笑うんだい。これが役に立つことを知らないね」
「だってその潜水服、始めから濡れていたんだろう?」
「そうさ」
「じゃ駄目だよ。その服は海中で使ったばかりだったんだ。大きい男というからには、岩にちがいない。ほーら御覧、赤字で岩と書いてあるじゃないか。僕たちは、馬鹿にされているんだよ」
「岩」
「岩の奴は、汽艇の中で発見されなかったろう。それは、追付かれる前に、この潜水服を着てヒラリと海中に飛びこんだからだ。この潜水服には酸素タンクがついているから、一人で海底が歩けるのだ。どんどん歩いて月島の海岸に近づくと大辻さんの隙をねらって、海面から海坊主のような頭を出し、いちはやく服をぬいで、大辻さんに渡し、自分は逃げてしまったのだ」
「そうかなア。先生をよこすといっていたけれどね」
「先生も生徒も来るものか。それよりか足跡でも探してみようよ」
「やあ、しめたしめた」
「どうだ三吉。俺は遊んでいるようでいて案外手柄を立てるだろう。名探偵はこうでなくちゃ駄目だ。この靴型も俺の手柄だから、俺が持っていることにするよ」


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