GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『三人の双生児』
現代語化
「―驚かないで、僕だよ」
「ま、あなたですか?―」
「ああ悪魔!恐ろしい悪魔!」
「あなたと私は血の繋がった兄妹じゃないんですか。それなのにこんな罪深い子を身ごもらせたなんて…ペッペッ」
「そんなに怒らないで。勘違いしてるみたいだよ」
「私は誓います。あなたも知ってるでしょうが、私はあなたと性的関係を持ったことはありません。そうでしょう。―だから怒ることはないじゃないですか」
「じゃあ、それが本当なら、なぜ私はあなたの子を宿したんですか。誰が騙されるんですか。嘘つき!」
「あなたと関係を持たなくても妊娠させることはできるんです。―覚えてるでしょう?前に私が医師としてあなたの体を調べたとき、簡単な器具で人工授精しました。造作のないことですよ」
「じゃあ、やましい関係はなかったんですね?」
「でもなぜ私を妊娠させたんですか!」
「それはね、あなたの頼みごとを叶えただけですよ。あなたは『3つ子の双生児』のことを知りたがって、どんな手段でもいいって言ってましたよね。実は、さっき話した結論の中には欠陥があったんです。それは私の父とあなたの母親が実際に関係を持ったかどうかということです。それを私は遺伝学で証明しようと思ったんです。調べてみると、あなたの母親の血筋には両頭児が生まれる傾向があるんです。真一と真二が生まれたのは、あなたの母親がわりと近い従兄弟である西村さんと関係を持ったから、その近親結婚のせいで真一と真二が両頭児になったんです。でも私の父とは他人同士だから、あなただけは健康に生まれた。そこであなたを私の父の子だと証明するには、一つの方法があると思ったんです。それはあなたにまた別の血族と受精してもらえば、きっと近親結婚のせいで両頭双生児が生まれるだろうって―これは私が論文に書こうと思っているテーマなんです。だから私は学問のためとあなたの願いのために、私の精子をあなたの卵子に植えつけたんです。その結果…」
「それで、その結果って…」
「その結果は、やっぱり私の予想通りでした。私は偉大な遺伝の法則を発見したんです。つまりあなたが今お腹に宿している子は、やっぱり真一と真二のような両頭児なんです。レントゲン写真がそれをはっきりと示しています」
「ああ、両頭児ですか?」
「私の研究は一段落つきました。で、これからどうするか聞きたいんですが。その両頭児を大学病院で流産させようと思うんです」
「ええ、どうぞお願いします。ぜひそうしてください。私は親になって育てるのは嫌です」
「ほら、これが真二の首ですよ」
「ああ、あの子ね」
原文 (会話文抽出)
「君の胎の子の父親はねエ」
「――駭いてはいけない、この僕なんだよ」
「まア、貴方ですって、――」
「ああ悪魔! 恐ろしい悪魔!」
「貴方と妾とは血肉を分けた兄妹じゃありませんか。それだのにこんな罪な子供を姙ませるなんて……ペッペッ」
「ま、そう怒ってはいけない。君は誤解しているようだ」
「僕は誓う。また君自身も知っているだろうが、僕は絶対に君と性的交渉を持ったことはないのだ。ね、そうだろう。――だから怒ることはないじゃないか」
「じゃあ、それが本当なら、なぜ妾は貴方の胤を宿したのです。誰が訛されるもんですか。嘘つき!」
「君と関係を持たなくても妊娠させることは出来る。――君は覚えているだろうが、この前僕が医師として君の身体を検べたときに、簡単な器械で君に人工姙娠をしといたのだ。造作のないことだ」
「じゃあ、忌わしい関係はなかったんですね」
「でもなんの目的で、妾を身籠らせたんです!」
「それは君、君の頼みを果しただけのことだよ。君は『三人の双生児』のことを知りたがって、どんな手段でもいい、と云ったではないか、実を云えば、先刻話をした結論の中には欠陥があったのだ。それは私の父と君の母親とが果して関係したかどうかということだ。それを僕は遺伝学で証明しようと思った。調べてみると、君の母親の血統には両頭児の生れる傾向があるのだ。真一真二が生れたのは、君の母親が割合に血縁の近い従兄である西村氏と関係したので、その血属結婚の弱点が真一真二の両頭児を生んだのだ。しかし僕の父とは他人同志だから、とにかく健全な君が生れた。そこで君が私の父の子であることを証明するのには僕の考えた一つの方法があると思うのだ。それはそこでもう一度君が君の血族から受精してみると、きっと血族結婚の弱点で両頭双生児が生れるだろうという――これは僕が論文にしようと思っているトピックスだ。そこで僕は学問のためと君の願いのため、僕の精虫を君の卵子の上に植えつけてみたのだ。その結果……」
「おお、その結果というと……」
「その結果は、果然僕の考えていたとおりだ。僕は偉大なる遺伝の法則を発見したのだ。すなわち君がいま胎内に宿している胎児は、果然真一真二のような両頭児なのだよ。レントゲン線が明かにそれを示して呉れたところだ」
「ああ、双頭児ですって?」
「僕の研究は一段落ついた。で、この上は君の希望を聞いてみたいと思う。その双頭児をこれから大学の病院で流産させてしまおうと思うのだがネ」
「ええどうぞ、そうして下さい。是非そうして下さい。妾は親となって育てるのはいやです」
「ほら、これが真二の首だよ」
「ああ、あの子だ」