GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『三人の双生児』
現代語化
「お母さんはどこかへ逃げちゃったよ。お前が可愛いわけじゃないんだろうね」
「あの立葵の咲いてた分かれ道?」
「うん」
「あそこに、私の妹がいたわね。あの子を連れて逃げたんじゃないの?」
「いや、そうじゃないよ。あの子は赤沢のおじさんが、どこかに連れてっちゃたんだ。お母さんは、あの子も可愛くないんだろう」
「じゃお母さんは、誰が可愛いわけ」
「それは分からん……赤沢にでも聞いてみろよ」
「ねえ、お父さん。元の家へ帰りましょうよ、ねえ」
「元の家?なんでそんなこと言うんだい」
「元の土地へ帰っても、もう家なんてないよ。あんなつまんないとこへ帰ってどうすんだ。この船の上の方がいいじゃないか。じっとしてても、どんな楽しい港へでも行けるんだし」
「お父さん。私たちの故郷はどこなの」
「故郷ね。お前の小さい頃は知らんだろうからな。いや知らなくていい、知らん方がいいんだ。そんなこと聞くな、聞くなよ」
原文 (会話文抽出)
「お母アさま、どうしたの?」
「おッ母アはどこかへ逃げちまったよ。お前が可愛くはないのだろうテ」
「あの立葵の咲いていた分れ家のネ」
「ウン」
「あの中に、あたしの同胞がいたわネ。あの子を連れて逃げちゃったのでしょ」
「イヤイヤそうじゃないよ。あの子は赤沢の伯父さんが、どっかへ連れていってしまったんだよ。おッ母アは、あの子も可愛くないのだろう」
「じゃお母ア様は、誰が可愛いの」
「そりゃ分らん……赤沢にでも聞いてみるのじゃナ」
「ねえ、お父さま。もとのお家へ帰りましょうよ、ねえ」
「もとのお家? なぜそんなことを云うのだ」
「もとの土地へ帰っても、もうお家などは無いのじゃ。あんな面白くもないところへ帰ってどうするんか。この船の上がいいじゃないか。じっとして、どんな賑かな港へでもゆける」
「お父さま。あたしたちの故郷は、何というところなの」
「故郷のところかい。おお、お前は小さかったから、よく知らんのじゃなア。イヤ知らなけりゃ知らんでいる方がお前のためじゃ。そんなものは聞かんがいい、聞かんがいい」