海野十三 『恐怖の口笛』 「僕には君の正体が、もっと早くから分ってい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「俺はお前の正体、もっと前から分かってたんだ。思い出せ。お前が四郎少年を殺したとき、必死に探してたものって何だったか覚えてるか?あれが警察にバレたら、お前はすぐ殺人犯として捕まってた。俺はそれを西一郎経由でお前に戻してやったんだ」
「嘘つくなよ。そんなこと知らないよ。―さあ、もう時間は1分しかないよ」
「お前に反省してほしいばかりに、俺はお前が自由になってるのを見逃してやってるの分かんないのか?」
「センチメンタルはやめろ。みっともない」
「あー、やっぱり俺の力じゃ届かないのか。……じゃ俺はもう何も諦めるよ。殺されればいい。でも1つだけ最後に聞きたい。お前はなんで吸血の味が分かったんだ。何がそんなに恐ろしい吸血鬼にしたんだ」
「それはあの世のお土産に話してあげるわ。―あれは先祖から伝わった遺伝なのよ。パチノって知ってる?あいつは9人の部下が死に絶えると、残らず血を吸い尽くしたのよ。私はそれを遺書で読んだの。……ああ、あの遺書が見つからなかったら、私は吸血鬼にならずに済んだかもしれない。恐ろしい運命ね」
「そうか、パチノが先祖から受け継いだ吸血病が、とうとうお前にまで伝わったのか、パチノの曾孫にあたる俺が……」
「黙れ!―」
「ググッ」
「あー、それ以上の悪口に私が耐えられると思ってるわけ?約束の5分以上喋らせるような甘い私じゃないよ。あなたもよく私の邪魔をしたわね」
「さあこれから久しぶり、ぬるい赤い血をゴクゴクと、あなたのお首から吸わせてもらうわよ」

原文 (会話文抽出)

「僕には君の正体が、もっと早くから分っていたのだよ。思い出してみたまえ。君が四郎少年を殺したとき、死にもの狂いで探していたものは何だったか覚えているだろう。それが官憲に知れると、立ち所に君は殺人魔として捕縛されるところだった。僕はそれを西一郎の手を経て君の手に戻してやった」
「出鱈目をお云いでないよ。妾は知らないことだよ。――さあ、もう時間は剰すところ一分だよ」
「君に悔い改めさせたいばかりに、僕は君の自由になっているのが分らないのか」
「感傷はよせよ。みっともない」
「ああ、到頭僕の力には及ばないのか。……では僕は一切を諦めて殺されよう。だが只一つ最後に訊きたい。君はなぜ吸血の味を知ったのだ。なにが君を、そんなに恐ろしい吸血鬼にしたのだ」
「そんなことなら、あの世への土産に聞かせてあげよう。――それは先祖から伝わる遺伝なのだよ。パチノを知っているだろう。あれは九人の部下が死ぬと、一人残らず血を吸いとったのだよ。妾はそれを遺書の中から読んだ。……ああ、その遺書が手に入らなかったら、妾は吸血鬼とならずに済んだかもしれない。恐ろしい運命だ」
「そうか、パチノが先祖から承けついだ吸血病か、そうして遂に君にまで伝わったのか、パチノの曾孫にあたる吾が……」
「お黙り!――」
「ウーム」
「ああ、それ以上の悪罵に妾が堪えられると思っているのかい。約束の五分間以上喋らせるような甘い妾ではないよ。お前さんはよくもこの妾の邪魔をしたネ」
「さあこれから久し振りに、生ぬるい赤い血潮をゴクゴクと、お前さんの頸笛から吸わせて貰おうよ」


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