海野十三 『恐怖の口笛』 「君の怠慢にますます感謝するよ。いよいよ儂…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「おい、相変わらずやる気ねえな。おかげで俺ら新聞の社会面で大フィーバーだよ。第一、千鳥の行方は?玉川ゴルフ場から半径10km以内なら、1軒1軒当たればすぐ見つかるだろ。なんで分かんねえんだ。分かってる方が難しいと思うけどな……」
「いや、それが不思議と分かんねえんすよ。もしかしたら犯人は夜中に千鳥をもっと遠くへ連れてったのかもしれねえ。でも大丈夫っすよ。その犯人も吸血鬼も、同じやつだって見当つけてて、別のとこから犯人探してます」
「別にって、お前が睨んでる犯人って誰だよ」
「ポントスです―キャバレーの失踪したマスターっす。部下は必死に探してます。明日中には必ず見つけてみせます」
「あいつもう死んでるんじゃねえか」
「死んでてもいいんすよ。ポントスが持ってる秘密が、恐怖の口笛事件の最後の鍵なんです」
「ふーん」
「じゃ、俺が首吊る前に、事件の真相教えてくれよな」
「雁金さん。とうとう犯人が決まったんすよ」
「おお。それは盛況だな」
「はしゃぎすぎんなよ。それでちょっと頼みがあるんすけど……」
「犯人を国外に逃がす相談なら、今すぐ断るぞ」
「そうじゃねえっす。実は今夜、絶対吸血鬼と思われる怪しいやつから会いたいって言われてるんす」
「お、それは都合がいいな。じゃあ新選組100人ぐらい貸してやるよ」
「いや、向こうは俺1人で会うって条件で言ってきたんす」
「そんな好き勝手な条件、ぶっ壊しちゃえ」
「そうはいかねえっすよ。―それで俺は1人で会うつもりなんすけど、もし今夜9時までに俺がお前に電話しなかったら、お前の一番下の引き出しに入ってる手紙を読んでくれ」
「なんだ、手紙が入ってるんか?」
「あったあった。こんなもんすぐ開けられるじゃねえか」
「開けてもダメす。ある仕掛けがしてあって、今夜9時にならないと文字が出て来ねえんだ。今見ても白紙っすよ」

原文 (会話文抽出)

「君の怠慢にますます感謝するよ。いよいよ儂たちは新聞の社会面でレコード破りの人気者となったよ。第一千鳥の神隠しはどうなったんだ。玉川ゴルフ場から十分ぐらいの半径の中なら、一軒一軒当っていっても多寡が知れているではないか。どうして分らぬのか、分らんでいる方が六ヶ敷いと思うが……」
「イヤそれが不思議にも、どうしても分らないのです。ひょっとすると、犯人は夜のうちに千鳥をもっと遠いところに移したかもしれないのです。しかし御安心下さい。あの犯人も吸血鬼も、同一人物だと睨んでいて、別途から犯人を探しています」
「別途からというと、君の覘っている犯人というのは誰だい」
「ポントス――つまりキャバレーの失踪した主人ですネ。部下は懸命に捜索に当っています。今明日中にきっと発見してみせますから」
「彼奴はもう死んでいるのじゃないか」
「死んでいてもいいのです。ポントスの持っている秘密が、恐怖の口笛にまつわる吸血鬼事件の最後の鍵なんです」
「ほほう」
「では儂が首を縊らん前に、事件の真相を報告するようにしてくれ給え」
「雁金さん。いよいよ犯人を決定するときが来ましたよ」
「ほほう。イヤこれは盛んなことだ」
「まぜかえしてはいけませんよ。それで一つ、お願いがあるのですけれど……」
「犯人を国外に逃がす相談なら、今からお断りだ」
「そうではありません。実は今夜、たしかに吸血鬼と思われる怪人物から会見を申込まれているのです」
「うん、それはお誂え向きだ。では新選組を百名ばかり貸そうかネ」
「いえ、向うでは僕一人が会うという条件で申込んで来ているのです」
「そんな勝手な条件なんか、蹂躙したまえ」
「そうはいかないですよ。――で僕は独りで会うつもりなんですが、もし今夜九時までに、僕が貴下のところへお電話しなかったら、貴下の一番下のひきだしの中に入っている手紙をよんで下さい」
「なんだ、手紙が入っているんだって?」
「あったあった。こんなもの直ぐ明けられるじゃないか」
「明けても駄目です。或る仕掛がしてあるので、今夜九時にならないと、文字が出て来ません。今御覧になっても白紙ですよ」


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