海野十三 『恐怖の口笛』 「その物語にある莫大な財産というのは、僅か…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「その話に出てくる莫大な財産って、たったこれだけのごく少数の金貨と宝石なんですか」
「そうだ、私が来たときから、この通り荒らされてたんだが、もちろんもう誰かが財宝を別の場所に移したんだろう。そいつは吸血鬼か、それとも痣蟹の先生だかの、どっちかだろうな」
「いや、まだ重要な容疑者いますよ」
「誰のことかね」
「それはこのキャバレーの主人オトー・ポントスです。あいつがやったんでしょう」
「ポントスはどこかで殺されてるんじゃないか。こないだ部屋に血が流れてたじゃないか」
「そうでした。でも私はあの時から別のことを考えていました。それが今ハッキリと思い当たったんですが、ポントスは殺されたように見せかけて、実はこの莫大な財産と一緒にどこかへ逃げちゃったんじゃないでしょうか。悪い奴のよくやる手ですよ」
「そういう説もあるにはあるね」
「――それで検事さんは、この事件をどうして知ったんですか。それから今話したパチノ墓地の物語とか…」
「それは今朝方、もう死んだと思ってるだろう青竜王が私邸へやって来て、詳しい話をしていったよ」
「えっ、あの青竜王が…」
「そうだよ。彼は昨夜12時、ここへ忍び込んだそうだ。すると、例の恐怖の口笛を聞きつけた。これはまずいと思うと同時に、恐ろしい悲鳴が聞こえた。近づいてみると、痣蟹が自分の服装をして死んでいたというんだ」
「ああ青竜王! するとこれは偽物で、本物の方は、やっぱり生きていたのか」

原文 (会話文抽出)

「その物語にある莫大な財産というのは、僅かこればかりの滾れ残ったような金貨だの宝石なのでしょうか」
「そうだ、儂が来たときから、この通り荒らされているのだが、もちろん既に何者かが財宝を他へ移したのに違いない。そいつは吸血鬼か、それとも痣蟹の先生だかの、どっちかだろう」
「イヤまだ重大な嫌疑者があります」
「誰のことかネ」
「それはこのキャバレーの主人オトー・ポントスです。あいつがやっていたのでしょう」
「ポントスはどこかに殺されているのじゃないか。いつか部屋に血が流れていたじゃないかネ」
「そうでした。でも私はあのときから別のことを考えていました。それが今ハッキリと思い当ったんですが、ポントスは殺されたように見せかけ、実はこの莫大な財産とともに何処かへ逐電してしまったのじゃないでしょうか。悪い奴のよくやる手ですよ」
「そういう説もあるにはあるネ」
「――それで検事さんは、この事件をどうして知られたのですか。それから今お話のパチノ墓地の物語などを……」
「それは今朝がた、もう死んだものと君が思っている青竜王が邸へやって来て、詳しい話をしていったよ」
「なんですって、アノ青竜王が……」
「そうだよ。彼は昨夜十二時、ここへ忍びこんだそうだ。すると、例の恐怖の口笛を聞きつけた。これはいけないと思う途端に、おそろしい悲鳴が聞えた。近づいてみると、痣蟹が自分の服装をして死んでいたというのだ」
「ああ青竜王! するとこれは偽せ物で、本物の方は、やっぱり生きていたのか」


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