海野十三 『恐怖の口笛』 「それで勇君が、ポントスの部屋の隠し戸棚か…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「それで勇坊が、ポントスの部屋の隠し棚から見つけた古文書ってどんなものだったの?」
「僕は分からない外国の文字ばっかりで、仕方ないから大辻さんに見せると、これがギリシャ語だって言うんです。大辻さんは昔勉強したことがあるそうで、辞書を引きながらやっと読んでくれましたけど、こういうことが書いてあるそうです。――明治2年『ギリシャ』人『パチノ』は10人の部下と一緒に東京に来て住居を構えたが、翌年ある疫病で部下は次々に死んで、今では『パチノ』1人になったが、『パチノ』も病気で命が長くないことを悟って自分で特製の棺を作って土中に下りて死んだ――それからもう1つの古文書は割と新しいものですが、これには――『パチノ』の墓穴は火事で時代が経つにつれて分からなくなってしまって、ただ『ギンザ』という地名が残っているだけだ。また『パチノ』が『オスミ』という日本女性と契ったが、彼女は災害で亡くなり、2人の間に生まれた1人(姓不詳)の生死は不明になった。それと一緒に『パチノ』の墓穴に関する重要な書類は紛失し、ただ本国に送った2、3の通信と『パチノ』の墓穴の内部の建築図が残っているだけだ――って言ってるんです。聞いてますか、青竜王」
「いや、熱心に聞いてるよ。それで分かった。キャバレーの主人ポントスも、本国からそのパチノの墓穴を探しに来てるんだ。その一方で、痣蟹もたまたまこの秘密を知り抜いて、本国で墓穴の建築図とかを手に入れて、日本へ帰ってきたんだ。すべての秘密はあのパチノの墓穴に隠されてるんだな。パチノの墓穴の場所については、ちょっと心当たりがあるけど、でもパチノの遺族を探し出すのはちょっと大変そうだね。でも何事も墓穴の中にあると思うよ。じゃ勇坊、――」
「待って下さい。青竜王は今どこにいるんですか。これからどこへ行くんですか」

原文 (会話文抽出)

「それで勇君が、ポントスの部屋の隠し戸棚から発見した古文書というのはどんなものだネ」
「僕には判らない外国の文字ばかりで、仕方がないから大辻さんに見せると、これがギリシャ語だというのです。大辻さんは昔勉強したことがあるそうで、辞書をひきながらやっと読んでくれましたが、こういうことが書いてあるそうですよ。――明治二年『ギリシャ』人『パチノ』ハ十人ノ部下ト共ニ東京ニ来航シテ居ヲ構エシガ、翌三年或ル疫病ノタメ部下ハ相ツギテ死シ今ハ『パチノ』独リトナリタレドモ、『パチノ』マタ病ミ、命数ナキヲ知リ自ラ特製ノ棺ヲ造リテ土中ニ下リテ死ス――それからもう一つの文書は比較的新らしいものですが、これには――『パチノ』ノ墓穴ハ頻々タル火災ト時代ノ推移ノタメニ詳カナラザルニ至リ、唯『ギンザ』トイウ地名ヲ残スノミトハナレリ。マタ『パチノ』ガ『オスミ』と称スル日本婦人ト契リシガ、彼女ハ災害ニテ死シ、両人ノ間ニ生レタル一子(姓不詳)ハ生死不明トナリタリ。ソレト共ニ『パチノ』ノ墓穴ニ関スル重要書類ハ紛失シ、只本国ヘ送リタル二三ノ通信ト『パチノ』ノ墓穴廓内ノ建築図トヲ残スノミナリ――というのです。聞いてますか、青竜王」
「イヤ熱心に聴いているよ。それで分った。キャバレーの主人ポントスも、本国からそのパチノの墓穴探しに来ているのだ。その一方、痣蟹もたまたまこの秘密を嗅ぎだして、本国で墓穴の建築図などを手に入れ、日本へ帰って来たのだ。すべての秘密はそのパチノ墓穴に秘められているのだよ。パチノ墓穴の場所については、いささか存じよりがあるが、しかしパチノの遺族を捜し出すのはちょっと骨が折れるネ。しかし何事も墓穴の中に在ると思うよ。では勇君、――」
「待って下さい。青竜王はいま何処にいるのです。これから何処へ行くのですか」
「僕のことなら、決して心配しないがいいよ。――」


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