海野十三 『恐怖の口笛』 「それをよく読んで下されば分るでしょうが、…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「それをちゃんと読めば分かりますけど、四郎さんと私は千葉の海で知り合って、友達になったんです。ただの仲良しってだけで、私は恋してなんていませんよ、間違えないでくださいね。――その日も四郎さんは私に会いに来たんです。それで夕方になって、四郎さんと日比谷を散歩して、あのツツジの陰でお話してたら、迎えの車のクラクションが聞こえて、ちょっと待っててね、すぐ戻るからって四郎さんを残したまま、日比谷の東門の方に行ったんです。そこで車を見つけて、四郎さんも一緒に乗せて迎えに行こうと思って車で戻ったら、ツツジの陰で四郎さんが殺されてたんです。私はビックリしたんですけど、人気商売の辛さで騒いでると人にバレて大変なことになると思って、引き返そうとしましたが、その日四郎さんに見せてもらった日記の中に私のことがたくさん書いてあったんです。それを残しておくのはダメだと思って、今渡したページを破ったんです。そしたらすぐに見つかっちゃいました。それが全部です」
「あー、そうですか」
「じゃイヤリングの宝石も、その時落としたんですね。これも拾われるとまずいから、後で探したっていうわけですね」
「おっしゃる通りです。宝石のことは楽屋に入ってから気づいたんです。ずいぶん探しましたわ。ホントに感謝してます。でもこのことは誰にも言わないでくださいね」
「大丈夫です。その代わり、何か犯人らしいもの見ませんでしたか?」
「犯人? 犯人らしい人なんて誰も見てません――」

原文 (会話文抽出)

「それをよく読んで下されば分るでしょうが、四郎さんとあたしとは、千葉の海岸で知合ってから、お友達になったんです。それは只の仲よしというだけで、あたしは恋をしていたんじゃありませんのよ、どうかお間違いのないように、ね。――その日も四郎さんはあたしに会いに来たんですわ。それで夕方になり、四郎さんと日比谷を散歩して、あの五月躑躅の陰でお話をしていたんですが、待たせてあった、あたしの自動車の警笛が聞えたので、ちょっと待っててネ、すぐ帰ってくるわといって四郎さんを残したまま、日比谷の東門の方へ行ったんですの。そこで自動車を見つけたので、四郎さんも連れてゆくつもりで自動車で迎えにゆき、再び五月躑躅の陰へいってみると、四郎さんが殺されていたのですのよ。あたしはハッとしたんですが、人気商売の悲しさにはぐずぐずしていると人に見つかって大変なことになると思ったので、引返そうとしましたが、その日四郎さんに見せて貰った日記のなかにあたしのことが沢山書いてあったものですから、これを残しておいてはいけないと思って、いま差上げただけの頁を破ってきたんですわ。すると間もなく皆さんに見つかってしまったんです。それがすべてですわ」
「ああ、そうですか」
「では耳飾の宝石も、そのときに落したんですね。これも拾われては蒼蠅いことになるから、後で探したというわけですね」
「仰有るとおりですわ。宝石のことは、楽屋へ入ってから気がついたんですの。随分探しましたわ。ほんとにあたし感謝しますわ。でもこのことは、誰にも云わないで下さいネ」
「ええ、大丈夫です。その代り、何か犯人らしいものを見なかったか、教えて下さい」
「犯人? 犯人らしいものは、誰もみなかったわ――」


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